専門家が採点 アベノミクスは「50点」 庶民に恩恵なく格差拡大

2020年08月29日 11時30分

辞任を表明した安倍首相(ロイター)

    大方の予想に反して安倍首相が28日に辞任を表明したことで、日経平均株価は一時600円以上も値を下げるショックに見舞われた。その後は買い戻されて下げ幅を縮小した。戦後2番目に長い71か月もの景気拡大期を達成したアベノミクスは、突然の終焉を迎えることになったが、果たして歴史に残るレガシーはあったのか? 株式評論家の山本伸氏がアベノミクスを総括する。

 2008年のリーマンショックの影響を引きずり、旧民主党政権下でドン底にあった株価を急回復に導いたのが、安倍首相が掲げた経済政策「アベノミクス」だった。

 大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして企業の成長戦略という“3本の矢”を柱に、バブル崩壊後の「失われた20年」の原因と言われたデフレ脱却を声高に掲げて、アナウンス主導とも言える経済政策を展開。

 このアベノミクスに呼応するように、日銀も2%のインフレターゲットを設定するなど、株式市場では期待が期待を呼んで株価が上昇し、戦後2番目の長さとなった景気拡大期を実現させた。

 一方で、株価の上昇に反して労働賃金はなかなか上がらず、庶民の暮らしは楽にならずに、格差だけが広がる「実感なき景気回復」という声が上がったのも事実だ。

 アベノミクスの成果については評価が分かれるところだが、株式評論家の山本伸氏は「50点」と厳しい評価を下す。

「初期のころは期待が期待を呼ぶ好循環で、株価はぐんぐん上昇。実際に少ない資金を元手に株で億を超える資産を手にした個人投資家が、ごろごろ現れたのは13~15年ころ。しかし、16年1月の甘利明氏の内閣府特命担当相辞任と、17年1月にトランプ米大統領が誕生したことがターニングポイントとなって、アベノミクスは劣化してしまった。特にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から米国が離脱したのは、アベノミクスに大打撃を与えたと言っていい」(山本氏)

 TPPは加盟国同士のモノやサービスの貿易に関する協定だが、一方で米国企業が日本国内の一部サービス業に参入することで、ある部分の利権を守ってきた“岩盤規制”を撤廃する外圧になると期待されていた。

 しかし、難航したTPP交渉を成立させた甘利氏がスキャンダルに倒れると、米国に誕生した“暴君”トランプ大統領が17年1月に一方的なTPP離脱を表明。山本氏は「最初にアナウンス主導で期待値を上げ、TPPを利用して成長戦略を決定的なものに仕立て上げるというアベノミクスの青写真は、完全に崩壊した。これを契機にアベノミクスという言葉が徐々にすたれていった」と振り返る。

 結局、アベノミクスではデフレ脱却、地方創生、働き方改革、成長戦略など様々な言葉が躍ったが、実感としてはどれも中途半端になってしまったのは否めないだろう。

 そんな中で山本氏がアベノミクスのレガシーと評価するのが「インバウンド需要の創出と外国人労働者の受け入れ」だ。

「観光立国を宣言して、訪日外国人旅行客が爆発的に増えたのはアベノミクス最大の功績。新型コロナウイルス禍で今はダメになってしまったが、就任前から訪日外国人旅行客は4倍近くも伸びた。また、『第2の開国』と呼ばれる外国人労働者の受け入れ枠を拡大したのも大きい。今後、人口減少が避けられない日本において、外国人労働者たちが引き上げるGDPは無視できない」(山本氏)

「実感なき景気回復」というように庶民には届かなかったアベノミクスの恩恵だが、次世代につながる種もまかれたことは間違いなさそうだ。