タイ全土で首相退陣要求 デモのシンボルはなんと「とっとこハム太郎」だった! そのワケは…

2020年07月30日 16時00分

ハム太郎を手にデモに参加する人の姿も見られる(ロイター)

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】タイで学生らによる反政府デモが激化。26日には全土で若者グループが行進したりプラカードを掲げ、プラユット首相の退陣を要求した。

「6年前に陸軍トップのプラユットがクーデターを起こして政権を握って以降、タイはずっと軍事政権。昨年の総選挙で民政に移行はしたが、形ばかりで首相はプラユットのまま。軍の影響力や利権は拡大する一方で、国民の不満がたまっていた」とは首都バンコク在住記者。

 だが今年に入ってからは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑える名目で、大規模デモは認められてこなかった。

「今のところタイは感染者約3300人、死者58人とコロナの感染を低く抑えている。たびたび延長され、8月末まで続きそうな今の非常事態宣言下では、“密”を避けるため集会は禁止。これが“デモ封殺”に悪用されていると指摘されてきた」と同記者は言う。

 一連のデモはこれに違反する形で強行され、そのシンボルとして使われているのがハムスターを擬人化した日本の人気漫画キャラ「とっとこハム太郎」だ。2000年に始まり大ヒットしたアニメはタイでも放映され、デモ参加者の中心はハム太郎を見て育った世代。

 デモ隊のプラカードや手描きイラスト、横断幕は、至るところハム太郎だらけ。女子率も高い。「今のタイ国民は、まるでオリに閉じ込められたハムスター。自由はなく、与えられたエサをただ食べるだけの毎日」という社会風刺が込められているそうだ。

「殺伐とした政治運動にはせず、ユーモアを交えるのがいかにもタイの若者らしい。ハム太郎なら平和的なデモだと主張できるし、学生世代は誰でも知っているアニメだから、シンボルキャラに選ばれたようだ」(同)

 アニメ主題歌の「大好きなのはヒマワリの種」という歌詞を「大好きなのは国民の税金」とした替え歌も、地元SNSで流行している。26日のバンコクデモでは、若者約2000人がこの替え歌を大合唱しながら、民主記念塔がそびえる大通り交差点のロータリーをグルグル走り回った。オリの中にある“回し車”で遊ぶハムスターの習性をやゆしたわけだ。

 SNSでは「ハムスタームーブメント」というハッシュタグで情報共有されている。議会の解散、軍に有利な憲法の改正、言論の自由などを求め、ますます拡大の一途。

 過去にもタイでは有名歌手を呼んでコンサート感覚のデモが開かれたり、座り込みの抗議に屋台が集まり観光名所化したり…。一見楽しそうだが、一線を越えると武力弾圧につながり、これまで流血の事態を招いたこともある。ハム太郎が血に染まらないことを祈るばかりだ。 (室橋裕和)

 ☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。