「飛田新地」営業再開した組合長の思いと対策

2020年06月01日 16時55分

飛田新地料理組合の入る飛田会館はかつて病院で、感染症対策が行われていたという

 大阪府は1日、新型コロナウイルス感染でクラスターが発生した施設を含む、すべての施設への休業要請を解除した。性風俗店も対象になり、4月3日から休業していた大阪市西成区の“ちょんの間”料亭街「飛田新地」や西区の「松島新地」も営業を再開。それに先立ち、本紙は飛田新地料理組合の徳山邦浩組合長を直撃。再開への思いや対策を聞いた。

 吉村洋文府知事は休業要請の全面解除にあたり「クラスターが発生した施設は、陽性者が発生しやすいので慎重になるのは当然だが、それを生活の糧にしている皆さんがいらっしゃるというのを、重く受け止めなければならない」と語った。性風俗店についても「業界団体もなく、僕らでガイドラインを作ることもできなかったが、一般的なガイドラインを尊重しながら、感染防止に努めてもらいたい。性風俗店だけを残すということはしません」と解除を容認した。

 これを受けて、4月3日から休業していた飛田新地も1日から営業再開となった。

 徳山氏は「政府は補償してくれなかったが、それもしゃあないとは思う。でも、そんな中で手を差し伸べてくれた知事、市長には絶対に恥をかかせることはできない。会員さんには『ここから(感染者を)出したらあかん。甘い気持ちでやったらあかんで』と言ってます」と話す。

 すでに5月24日から、すべての料亭従業員や地域住民らを対象に抗体検査を実施し、独自の新型コロナ対策を進めている。

「抗体検査をやると言ったら、地区にある10の商店街や学校、PTA、みな参加してくれた。2000キット用意して、ほとんど結果が出てるけど一つも(陽性が)出てない」。万全を期すため、従業員には今後も2週間に一度のペースで抗体検査を実施していく予定だ。

 府は休業要請の解除に当たって、感染防止策の実施とともに、QRコードを活用して感染発生情報を伝える「大阪コロナ追跡システム」の導入を要請している。

 刹那の出会いが繰り広げられる飛田新地において、QRコードの登録に気が引ける男性も多いだろうが、徳山氏は「もちろん導入はやります。店の中にきちんと掲示させます。逃げる理由は何もないし、やれることは全部やる」とキッパリ。実際の登録は客の判断に委ねられるが、コロナが発生すれば従業員にも街にも被害が出るだけに、府の要請に従うつもりだ。

 そんな飛田新地は、休業で売り上げがゼロになり、一刻も早い再開を待ち望んでいたのかというと、意外にも「(経営者が)高齢でやめるというのはあっても、経営難でやめるというのはない。ほぼすべての料亭が営業再開できる」。従業員も仕事を求めて別天地に移動することなく、8~9割が残っていそうだという。

 慌てて再開しなくてもいい状況で、再開に向けて動きだしたのは「再開しないと街が持たない」からだ。

 徳山氏は「ほとんどの歓楽街が、よそから集まってきた人々が営んでいる中で、飛田新地は防災に取り組み、近隣商店街と協力して地域と一体で生きてきた。僕らの子や孫もこの地域で生きていくんですよ」と話す。

 そして、「ちょっとこっち来て」と、飛田新地料理組合が入る建物の2階へと本紙記者を案内してくれた。

「ここはね、結核など感染症を検査する施設やったんですよ。飛田は大正5(1916)年に許認可をもらい、7年に開業したんやけど、直後にスペイン風邪が流行してやられた歴史がある。今、また感染症対策が必要になり、みんなで力を合わせて、できるだけのことをしようということなんですよ」

 考えうる万全の対策をもって、早期再開する“男の性地”の裏には、地域で生きる人々の思いが詰まっている。