【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】カンボジアはさる20日、欧米など6か国からの入国禁止解除を発表した。日本を含むその他の国々からの入国はすでに認めており、これで全世界に向け“開国”したアジア初の国になった。首都プノンペン在住駐在員は「世界的にパンデミックが終息傾向だからと政府は言ってるが、あまりに早い」といぶかる。

 背景にあるのがインバウンド業界の後押し。農業以外これといった産業に乏しく、カンボジアは国内総生産の3割以上を観光業に依存している。外国人観光客は年間約600万人で、今年はこれを700万人にしようと国を挙げて動いていた。

 その矢先の新型コロナウイルス禍。年間260万人訪れる世界遺産アンコールワットは、4月期の外国人向けチケット販売数がたった654枚で、前年同月比99・6%減まで落ち込んだ。広大な遺跡公園内に入場者5人という日も。本来なら大混雑のはずが、19世紀中ごろの遺跡発掘当時の静かな姿を取り戻したと、国内でも話題になった。地元住民13万人の大半は観光業に従事し、町全体が失業したような状態が続いていたため、一刻も早い外国人受け入れ再開が望まれていた。

 入国条件は、渡航72時間以内に発行されたPCR検査のコロナ陰性証明書を持っていること、5万ドル(約540万円)以上の医療費に対応できる旅行保険に加入していること。陸路の国境は当面開けず、空路のみの出入国となる。加えて、コロナリスクの高い国からの渡航者に対し、ひと晩以上の隔離とPCR検査実施なども続けている。

「地元では、まず中国人が大挙するといわれている。カンボジアは中国の経済援助に大きく依存し、中国人観光客は年間200万人。この数字を回復すべく観光大臣自ら、中国人をターゲットにしたツアーやホテルプランを打ち出し、観光地の衛生対策を進めていくと宣言した」(駐在員)

 欧米からの観光客も呼び込みたい狙いだ。地元紙「プノンペン・ポスト」によると、いまだヒドい状況の米国に対し、政府は直行便の開設を望んでいるとアピールした。

 世界中で“アフターコロナ”に向けた動きはあるが、観光旅行の再開となるとまだ時間はかかりそう。そんな中“入国禁止国ゼロ”にしたカンボジアは、今夏のバカンスシーズンに独り勝ちするのだろうか。

「コロナには中国・武漢型、欧州型、米国型の3タイプがあるという話もある。それが観光客によって運ばれ、カンボジアで混じって突然変異しないか心配」と、前出駐在員はコロナの強毒化を恐れている。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。