中国「コロナ国際調査」に同意の思惑

2020年05月20日 16時25分

習近平国家主席(右)とWHOのテドロス事務局長はベッタリの関係だ(ロイター)

 新型コロナウイルスはどこから来たのか? 世界保健機関(WHO)の年次総会は19日、ウイルスの発生源について今後、国際的な調査をすることを決議して閉幕した。WHOはテドロス事務局長が「中国寄り」との批判を受けるが、意外だったのは、国際調査の受け入れに中国が同意したことだ。一体何を企んでいるのか――。

 新型コロナウイルスによる感染者は世界で480万人超、死者は32万人を突破(19日現在)。もっかオーバーシュート中なのがロシアとブラジルで、特に後者は経済優先主義によって、感染者数は25万人に達し、米国(150万人)、ロシア(29万人)に次ぐ世界3位となった。

 日本でも3月下旬に感染が急拡大。ここにきてようやくピークアウトしつつあるが、今秋にはとみられる第2波襲来は確実視されており、予断は許さない。

 こうした状況下で、バチバチやり合っているのが米国と中国だ。もともと世界の覇権をめぐり争ってきた両国だが、コロナを機に先鋭化。トランプ米大統領はWHOを「中国のあやつり人形」とやゆ。これに中国は猛反発している。

 日本の政界関係者は「着々と中国包囲網が敷かれている印象だ。テドロスの辞任は不可避。あとはそれがいつになるか、だ」と指摘する。

 総会では新型コロナウイルスの発生源などについて、欧州連合(EU)主導で国際調査を求める提案を行い、中国もこれに賛同した。つい先日、オーストラリアが国際調査チーム結成を呼び掛けた際は、かたくなに拒否し、オーストラリアに“経済報復”に出たのに、やけにあっさり受け入れたように映る。

「ここで拒否すれば、余計に疑惑を深めますからね。加えて数の原理で勝てない面もある。中国と友好関係にあったロシアも今回は賛成に回った。ロシアは感染者増加に歯止めがかからず、プーチン大統領の支持率にも影響を及ぼしている。新型コロナが両国の関係にすきま風を生んでいるのかもしれない」(同)

 とはいえ、中国も先を見越しての動きだろう。肝心の調査自体が高難度のミッションで、世界が期待する「いつ、どこで最初に発生した」かが断定される可能性は低いというのだ。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏の話。

「これまでの情報を精査すれば、ウイルスの発生源は、ほぼほぼ中国。ただ、中国のどこで発生したかは分かりません。武漢の海鮮市場で蔓延はしましたが、そこに持ち込んだ人が誰かはまだ分かっていません。この人だ!と特定するのは難しいと思います」

 もう一つの方法としてはウイルスの変遷をさかのぼるやり方だが、こちらも“型”は無数に存在する。

 日本も決して人ごとではなく、中国では「昨年8月に日本で新型コロナが発生していた」とする説や、戦時中に細菌兵器を研究していた旧日本軍731部隊の名前を出し「コロナは彼らによって作られた」とするトンデモ主張も存在。いつ、火の粉が降りかかってくるか分からない。黒井氏はこうも付け加える。

「正直、ウイルスの発生源調査は中国にとって厄介ごとではありません。人工的に作られたモノでない限り、どこの国でも起こりうる。中国が本当に恐れているのは、感染拡大初期に事態を隠蔽したことが正式に認められ、世界中から責任を追及されることです」

 もっか中国は時間稼ぎに必死。国際調査を受けるのも「感染の収束後」と譲らない。引き延ばし作戦をする理由は、トランプ氏が再選を目指す11月の大統領選があるからだ。

「トランプ氏が中国を糾弾しているのは、米国の感染拡大を招いた自身の失政から目をそらすため。裏を返せば、中国とトランプは同じ穴のムジナ。両国が本気でコトを構えることなどありえない。選挙が終わってしまえば、米中の緊張関係が緩和する可能性もある」(永田町関係者)

 あの手この手で逃げ切りを図る中国だが、うまくいくか…。