コロナ禍で外出自粛、在宅勤務などのテレワークを強いられる中、1人になれる“仕事場”を車の中に求める人が増えている。また、公共交通機関を利用したくない層向けに、新たなレンタカーのプランも誕生。コロナで大打撃を受けている自動車業界だが、“車内テレワーク”“通勤の足”として利用される新形態が巻き返しの材料となるのか。

 緊急事態宣言で各企業はテレワークの導入を進め、普及率は着実に上がっている。家で過ごす時間が増えたことで、家族、夫婦間がギスギスし、ストレスからコロナ離婚、コロナDVなどのニュースも多くなってきた。

「仕事の時だけでも1人で集中したい」と適度な距離感が望まれる中、注目されているのが愛車の中だ。自宅以外のテレワーク先では喫茶店やファミレス、コワーキングスペースのほか、カラオケボックスやビジネスホテルなども場所を提供しているが課題も多かった。

 都内に在住する30代男性は「喫茶店やファミレスは感染リスクがある上に、長居しづらいし人目があるので通話も気を使う。コワーキングスペースは1万円近く会費がかかるし、カラオケボックスやホテルも高くつく。その点、車は1人になれるし密室ですから、雑音が入らず電話もできるし、シガーソケットから給電もできる」とマイカーさまさまだという。

 車内を快適な仕事場とするために日産自動車では「#OneMoreRoom」と題し、段ボールで作る車内用デスク、料理用ボウルを用いたWi―Fiアンテナ、古着を使ったクッション、エコノミークラス症候群対策のストレッチなど専門家の指南を特設サイトで紹介している。

「弊社も在宅勤務が続いており、もっと働きやすくできないかという声もあり、今回の企画につながった」(日産)

 テレワークはコロナが終息した後も定着必至で、車内作業場のテクニックでは、他にもユーチューバーやブロガーがさまざまな方法を勧め、ブームとなった“車中泊”さながらの様相だ。

 日産は「現在のような状況下だけでなく、今後、ますます車はただの移動手段ではなくなってくる。電気自動車はすでに家の電源になっていて、自動運転技術が進化していくことで、運転でのストレスも緩和され、車内での過ごし方も変わってくる。ストレスなく、まるで家にいるような気持ちで過ごせる日も近いと思います」と話す。

 新たな格安レンタカーサービスを13日から始めたのはトヨタ自動車だ。

 前日、2021年3月期の連結営業利益が前期比約80%減の5000億円の予想を発表し、衝撃が走ったばかりだが、新サービスはコロナ禍だからこそ編み出されたものだ。

 公共交通機関ではピーク時に比べ、減ったとはいえ、いまだ通勤ラッシュ時は満員電車状態が続いている。「コロナ感染リスクを避けたい」と早朝の電車に乗ったり、自転車通勤が増えている中、トヨタレンタリースが導入したのは、午後3時以降貸し出し、翌午前10時までの返却で1100~2500円の「通勤アシストレンタカー」プランだ。

 都内に通勤している千葉県在住の40代の男性は「自転車だと雨や風が強い日は無理で、マイカーだと都内の駐車場は高過ぎた。このプランなら現実的」と歓迎する。実施期間は感染拡大が終息するまでとしている。

 都内の大手ディーラーは「コロナで営業時間は短縮し、お客様は試乗もできない厳しい状況ですが、電車に乗りたくないという方や、個人スペースが確保できる点など改めて車の必要性が高まっていて、問い合わせは増えている」と巻き返しの糸口はつかんでいるという。

 かつてない苦境に立たされた自動車業界だが、“新しい生活様式”となるウィズコロナ、アフターコロナの時代では、車の価値はコロナ禍前よりも高まるかもしれない。