「ムーンショット」で見えた2050年の日本

2020年05月13日 10時00分

 新型コロナウイルスの新規感染者数が目に見えて減り、世間では「アフターコロナ」のことを考える人も出始めている。そんななか内閣府がホームページ上で公開した、30年後の日本の未来像を示す「ムーンショット」が話題となっている。それによれば、2050年までに「人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」するという。オカルトやSFにも通ずる世界観だが、いったいどういうことなのか? 担当者を直撃した。

 お堅い、お役所仕事のイメージが強い内閣府のホームページで、ひときわ異彩を放つのが科学・イノベーション分野からたどり着く「ムーンショット」のページだ。

 決してZOZO創業者の前澤友作氏が妙なことを言いだしたわけではない。「ムーンショット」とは、未来社会を展望し、困難で莫大な費用はかかるが、実現すれば大きなインパクトをもたらす挑戦を意味する言葉だ。

 語源は米国のアポロ計画におけるジョン・F・ケネディ大統領の「1960年代が終わる前に月面に人類を着陸させ、無事に地球に帰還させる」というスピーチから来ている。

 内閣府は1月に日本における「ムーンショット目標」を公表。そこにはこうある。

「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」「誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター基盤」

 一読しただけでは、何がなんだかわからない。ネット上では、内閣府による国民統制を疑う陰謀論まで噴出。そこで本紙が、内閣府未来革新研究推進の担当者を直撃したところ、「陰謀論は承知していますが、全然違います(笑い)。30年後の日本の未来像について提案しているのです」と説明した。

 具体的に言えば、コロナ禍で急速に普及したリモートワーク。これが30年後には「山奥に除雪しに行くとなった時に、自宅にいながら遠隔操作したロボットで除雪が可能になるかもしれない。乗用車も自分の部屋からスマホで操作することになる」という。

 現在も遠隔操作できるロボットはあるが、人間の指示に遅れて反応したり「ぎこちないので、ガラスのような物を運ぶことはできない」。それが技術革新により、人間同様の動きができる日が、2050年には来るというのだ。

 ムーンショットの分野は多岐にわたり、地球環境でいえば、現在のCO2の削減から飛躍し「大気中のCO2をダイレクトにつかみ、それを別のクリーン物質に変えることができるかもしれない」。実現すれば、もう温暖化や大気汚染とは無縁になるが「現時点でそのような技術はありません。これから見つけていこう、と。それがムーンショットなのです」。

 現在、内閣府は賛同してくれる人材や企業を募集している。

 英科学誌「ネイチャー」によれば、主要科学誌に19年に掲載された論文数などにもとづく研究機関の研究力ランキングで、日本勢はトップ10から初の陥落。東京大学の11位が最高だった。国別ランキングでも、日本は米国、中国、ドイツ、英国に続く5位で変動はなかったが、論文貢献度で5・1%減だった。

 アフターコロナの世界では、日本が“技術立国”の看板を取り戻すことができるか?