「いらっしゃいませ。テレビモニターの前のカメラに券を見せてもらっていいですか?」

 モニター越しに会話が弾むのは、大阪・平野区の銭湯「入船温泉」だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言で、銭湯など「一般公衆浴場」は、生活インフラとして休業要請の対象とはならなかったが、大坪学店長は「やはりお客様が集まりますし、僕らがウイルスを持っている可能性もある」と時間短縮やサウナの使用を禁止している。

 それでも、銭湯を必要とする人のため「しんどい中でも、おもしろい取り組みができないかと考えました」と編み出したのが日本初?の「オンライン番台」だ。

 利用者は入浴券などを自販機で購入し、番台に設置されたカメラに提示。別室にいるスタッフが確認し、不明な点があれば音声で教えてくれる。

 緊急事態宣言が出された先月7日から実施しているが、利用客の反応も様々だ。

「やっぱり(店員と)直接会話できるのがいいわね」と話す高齢女性がいれば、「慣れたらどうってことない。開けてくれてるのがうれしい」という男性も。大坪店長も「若い方からは『なんでこんなんやってんの?』『斬新やわ』と言ってくれますが、お年寄りの方は慣れるのに時間がかかってましたね」と話す。

 元バンドマンで脱サラ経験のある大坪店長は、6年前に店長に就任。

「もともと銭湯に興味はなかったんですが、やると決めた以上はね」とこれまでにもユーチューブや各種SNSで発信を行うなど様々なアイデアを打ち出してきた。

 オンライン番台についても「ホンマはこんなこと、しないでいいのが一番。早く今まで通り、裸の付き合いができるように戻ってほしいですね」と、一刻も早い“元の生活”を心から願っている。