フィリピンで中国コロナソングが大不評 曲名「一つの海」…東シナ海のことか!

2020年05月07日 16時00分

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】在フィリピン中国大使館が先月23日、新型コロナウイルスに立ち向かう両国の医療従事者をたたえる歌をつくり、そのミュージックビデオ(MV)をユーチューブで公開した。

 動画は約4分半。中国から続々届く支援物資や、フィリピン人医師に指導する中国の衛生当局、それに対し感激するフィリピン人たち…といった映像が延々流れる。ドゥテルテ大統領が習近平国家主席に謝意を表すシーンも。

 だが曲名が「リサン・ダガット」、タガログ語で「一つの海」だったことで、大ヒンシュクを買うハメになった。

「中国は長年、フィリピンと領海問題で争ってきた。中国本土から遠く離れた南シナ海の島々も自国の領土だとする中国に、フィリピンは反発。オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は4年前、中国の主張に法的根拠がないという判決を出している」とは首都マニラ在住記者。

 それなのに中国は先月18日、南シナ海の島々を管轄する「南沙区」「西沙区」という2つの行政区を新設すると宣言した。世界がコロナで混乱するドサクサ紛れに、こんなことを勝手に決めた中国に、フィリピン法相も抗議。そのわずか5日後のMV公開とあって、フィリピン人は「『一つの海』とは中国が支配する南シナ海のことか」と怒っているのだ。

 作詞したのは駐フィリピン中国大使。中国の外交官や中国系歌手、地元政治家やフィリピンの大御所女性歌手イメルダ・パピンが、中国語とタガログ語で交互に歌いつなぐ。両国の友好を演出するはずが、今や猛バッシングを浴びている。

 さらに5月に入ると中国は、南シナ海に新設した“自国領”では水産資源保護のため禁漁にすると一方的に通告。これにはフィリピンばかりか、周辺国のベトナムやマレーシアも抗議している。

 動画は81万回以上再生されているが、「いいね」はたった約3700で、約21万が「よくないね」と低評価だ。削除を求める活動も広がっていて、3万3000余りのコメントがアジア全域から寄せられている。

「中国はコロナウイルスを世界に広めて、その隙に侵略を進めている」「台湾人だが、中国はアジア全体を侮辱している」「マレーシア人はフィリピンとともに戦う」「我々ベトナム人はフィリピンと協力して、中国を南シナ海から追い出さなくてはならない」などなど。

 この騒動を報じた香港の大衆紙「蘋果(ひんか)日報」は、「いち早くパンデミックから脱した中国が、医療体制の整っていない国々に手厚い支援を行いつつ、外交的侵略も同時にやっている。中国共産党はコロナ禍を“100年に一度の台頭の機会”とみており、より国際的な地位を高めようとしている」と分析している。

 メロディーはマイナー調で、こんな背景を知ると聴いててちょっと怖い。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。