【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】3月22日から、緊急事態宣言より強制力の強いロックダウン(都市封鎖)中のタイでは、スーパーや薬局などを除く商業施設は閉鎖され、レストランはテークアウトのみになっている。同月18日から歓楽街もすべて閉鎖。バーやクラブ、風俗など“夜の社交界”がクラスター(感染者集団)になりかねないからだ。

 4月3日からは午後10時~翌朝4時の外出が原則禁止。違反者には2年未満の禁錮刑、4万バーツ(約13万3000円)未満の罰金もしくはその両方が科せられる。

 特にあおりを食っているのが夜の街を彩る風俗嬢たちだ。タイではコロナによる失業、所得が減るなどした市民に対し、月額5000バーツ(約1万6600円)の給付を決定し、すでに2000万人以上が申請したが、風俗嬢は対象外だ。

 首都バンコク在住記者は「ミャンマーやカンボジアなど隣国からの出稼ぎ女性や男性も含め、タイの性産業従事者は15万~20万人いるといわれる。ただ、彼女たちは表向き、いないことになっている。タイにも売春防止法があり、売春は非合法。街の至る所に風俗施設があるから誤解されがちだが、すべて当局のお目こぼしで営業しているにすぎない。働く風俗嬢も非公式な存在だから、給付金対象から外れるのです」と説明する。

 地元大衆紙は「風俗嬢も給付金の手続きをしようとしたが、オンラインの申請フォームの職業欄に該当するものがなく、諦めて田舎に帰る女性たちが増えている」と報じた。だが、地元に帰った風俗嬢が差別されるケースが相次いでいるとも。

「他国と同様、タイも都市部での感染が非常に多い。それに風俗施設という密閉空間での濃厚接触を生業にしていることで危険視され、地域のコミュニティーに受け入れてもらえないこともあるようだ。また感染しているが無症状のまま帰郷し、家族にうつしてしまうこともある」と前出の記者。

 タイ南東部の巨大歓楽地パタヤだけでも風俗嬢5万人が失業し、地元に帰ったといわれるが、彼女たちが感染源になる可能性もある。それを恐れ、都市部にとどまる風俗嬢に対し、早急な支援が必要だと地元NGOは指摘している。

 バンコクの日本人向け歓楽街・タニヤで働く風俗嬢の頼みの綱は、日本などにいる“パパ”たちだという。

「今はタニヤもネオンが消えて静まり返り、女の子たちの収入はパパからの仕送りだけ。普段タイに足しげく通っている日本のオッサンたちは、入国制限でもうタイに来られない。だから女の子のほうはSNSで“遠距離パパ活”に励み、送金に頼るしかない」(前同)

 世界的コロナ禍が終息しても、“アジアの夜遊び天国”は激変してしまうかも…。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。