コロナ感染者ゼロ「島根」「鳥取」緊急追跡 山陰ならではの特殊な事情

2020年04月04日 12時02分

“コロナ疎開”で安全地帯の島根にも人が訪れはじめている(写真は出雲大社)

 全国47都道府県で、感染者を出さず新型コロナウイルスに打ち勝つのはどの県か――。そんな話題がSNSやネットで注目を集めている。3月30日に富山、同31日に山形で感染者が初めて確認され、残るは岩手、鳥取、島根の3県。ここまで感染ゼロで踏みとどまっているのは奇跡的ともいえるが、山陰のお隣同士でよく混同される鳥取と島根を緊急取材。感染者がいない背景に迫った。

 山陰で隣り合い「鳥」「島」と似た漢字で始まる2文字の鳥取と島根は、どっちがどっちか位置をよく間違えられるライバル県。厚生労働省の人口変動データでさえ、逆に記載されたほどで、人気深夜番組「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)でもマツコ・デラックス(47)にたびたびイジられている。

 両県がコロナ感染者ゼロの理由として、ネット民が挙げているのは人口の少なさだ。鳥取の人口は55万3971人で全国最少、島根は67万411人で、47都道府県で鳥取に次いで人口が少ない。

 PCR検査を実施した人数も少ない。3日までの検査人数は、鳥取が229人、島根が163人ほど。2000件以上の検査が行われた北海道や東京、愛知、兵庫などと比べると圧倒的に少なく、絶対数が影響しているのは間違いなさそう。

「具合が悪くても、検査を受けに行くことができない」と山陰特有の事情を挙げる地元民も複数いた。島根で暮らす60代男性が真顔で語る。

「仮に発熱してコロナ感染者第1号になった場合、田舎なんですぐにどこの誰かバレてしまう」。人口過密の首都圏でもコロナ感染が判明して、風評被害を受けている店舗や会社も多い。感染者ゼロだからこそ、余計に注目を浴びかねない。だから、外出を控えるなど、絶対に感染しないように自衛している人が多いということか。

 同じように噂が広まるのを懸念する鳥取東部在住の50代男性は「コロナ第1号になって恥をかくまいと、我慢して家で寝てる人がいるんじゃないのか」といぶかしがる。鳥取や島根では、用事で東京に行っただけで「コロナかも…」と周りで遠ざかる人もいるという。

 コロナ侵入を止めている別の理由として、鳥取県内の観光関係者は「コロナ騒動が始まる前後で国際線が運休し、インバウンド(訪日外国人客)が少なかったのが幸いしたかも」と指摘する。

 山陰と海外を結ぶ国際線は、鳥取西部の「米子鬼太郎空港」からソウル、香港、上海の3路線。だが、日韓関係の悪化でソウル便は昨年10月から、コロナ騒動で上海は2月11日、香港も2月18日から運休している。中国山地に隔てられた山陰は、新幹線も通っていない。首都圏や関西圏からわざわざ旅行で来る外国人客は少なく、図らずも抑止効果になったと言えなくもない。

 ネット上で言われているのが、島根の人気観光名所の「出雲大社が守っている」という神のご加護説だ。そもそも、出雲大社で有名なのは「縁結びの神様」で、疫病退散は専門外の雰囲気だが、境内では今、参拝者が手や口内を清める手水舎の柄杓が撤去されている。

 地元の土産物店の店主は「例年より参拝客は少ないが、最近『島根は感染者がいない』と“安全地帯”だと思って来る個人客が出始めた。そういう人がコロナを持って来たら、やれん(やってられない)」と複雑な表情。

 このまま感染者ゼロでコロナ禍が終息するのを祈りたいところだが、コロナ疲れした人が殺到すれば…。“最後の楽園”も陥落してしまうのか。