「大都市の竜巻」こうして身を守れ

2013年09月04日 16時00分

竜巻の影響でひっくり返った軽乗用車(埼玉県越谷市大杉付近)

 ほんの数メートルで被害が雲泥の差に! 2日午後2時ごろ、埼玉県越谷市や同県松伏町、千葉県野田市で竜巻とみられる突風が発生、住宅の屋根が吹き飛ぶなど大きな被害が出た。ピンポイントで被害を与える“黒い悪魔”竜巻は今回、危うく幼稚園児たちをのみ込むところだった。これまでは、人家の少ない広い場所で猛威を振るったが、かつて経験のない大雨が降る近年の異常気象で、大都市のど真ん中での発生を危惧する声も出ている。

 埼玉県警は越谷市内で66人が負傷し、うち2人が重傷と発表した。千葉県野田市も、女性1人が軽傷を負ったと発表した。両県で建物の損壊は540棟を超えた。

 越谷市大杉地区では特に甚大な被害が出ており、竜巻が自宅を直撃した住人(50代女性)はその瞬間をこう振り返る。

「雷が鳴って暗くなったのは気づいていたけど、竜巻はあっという間。屋根が飛んだと思ったら、材木や自転車が宙を舞っているのが見えた。あわてて2階から玄関に逃げて柱につかまりました。ガラスが降ってきてもうダメだと思った」

 同地区の北陽中学校に隣接する越谷市立第2給食センターでは窓ガラス20枚以上のほか、30台近くの車のフロントガラスが穴だらけになった。

 職員は「明日から給食が始まるはずだったのに、これではしばらくパンと牛乳しか出せそうにない」と肩を落とした。しかし、近くの幼稚園関係者は「不幸中の幸い。今日は午前中保育だったので、ほとんどの園児が帰宅していた。(竜巻は)ものすごいスピードでやってきたので、もし園児が外で遊んでいたらひとたまりもなかった」と胸をなで下ろした。

 今回の竜巻は越谷市北部から松伏町を経て、千葉県野田市にかけて北東方向に進んだとみられるが、甚大な被害を受けたのはまさにピンポイントで、前述の幼稚園も北陽中学校からわずか150メートルしか離れていないのに、ガラスの損傷程度で済んだのは奇跡に近い。

 また、大杉地区から約4キロの場所にはプロゴルファー・石川遼(21)の私設練習場もあるが、こちらは設備に異常なし。

「松伏町という名前がニュースに出たので心配する電話が結構ありましたが、ここでは雨も降っていません」(スタッフ)

 勢力が100キロや1000キロの単位で広がる台風や低気圧に比べ、竜巻は数十~数百メートルで、多くは10分以内に消滅する。小さいがゆえに予測は難しい。気象庁が発表する「竜巻注意情報」の的中率も決して高くないのが現状だ。

 竜巻注意情報は、原則として都道府県単位で注意を呼び掛け、約1時間有効となる。2012年は1年間で597回発表があったが、発生前に情報を発表できたのは17回で的中率はわずか3%。11年は1%、10年は5%だった。今回、気象庁が埼玉県に注意情報を発表したのは午後2時11分、直前の出来事だった。

 竜巻といえば米国で発生するイメージが強いが、温暖化の影響か、日本でも増えている。「竜巻が起きやすいのは地面が暖まりやすい広く平らな場所。つまり海が近い場所や大きな平野で竜巻が起こりやすい」とは気象関係者。気象庁のデータベースによると竜巻またはダウンバーストが発生したのは2010年は37件、11年は15件、12年は28件。また海上で発生し、その後上陸しなかった海上竜巻を調べると10年は43件、11年は37件、12年は50件。海上で発生した竜巻が沿岸の町を襲わないとは限らない。「竜巻の多くは人家が少ない場所で発生するが、今回のように越谷など人家が多い場所でも起きるとなれば、大都市で発生し甚大な被害が出る恐れもある」と危惧する専門家もいる。

 新野宏・東京大学大気海洋研究所教授(気象学)によると「竜巻の風は、地面との摩擦のため一般的に地表に近い方が弱い。コンクリートの建物の1階に避難してほしい。雨戸やカーテンを閉めガラス窓から離れるのが重要。自動車も巻き上げてしまうので車内にとどまるのは危険だ」という。

 竜巻を見つけたらすぐに身を守る行動を取らないと手遅れになる。