韓国で刑事告発された“土下座教祖”の危険な思想

2020年03月03日 16時15分

マスク姿で謝罪したイ教祖(ロイター)

 新型コロナウイルスが猛威を振るっているのは、中国や日本だけではない。韓国では新興宗教団体「新天地イエス教会」内での集団感染が原因とみられ、大邱を中心に国内で感染が拡大。2日の発表では感染者数は4212人、死者は22人。感染を拡大させたとされる同教団のイ・マンヒ教祖(88)は事態の深刻さにようやく全面謝罪したが、最悪のシナリオも懸念される。

 イ教祖は2日、記者会見し、「故意ではないが、大勢の感染者が出た」と釈明し、土下座で謝罪した。同教団が批判の矢面に立ったのは、韓国内での感染者のうち、約6割が同教団の信者らとされるからだ。

 礼拝は建物内で信者が密接し、座った状態で行われる。装飾品は禁じられ、眼鏡も着用できないほど。ウイルスが感染しやすい環境下で、目や口はノーガードで感染が拡大したとみられる。1日にはソウル市が、感染拡大防止に協力しなかったことで感染者や死者が出たとし、殺人容疑に当たるとしてイ教祖ら教団幹部を刑事告発していた。

 韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「イ教祖はコロナ騒動を『教団の発展をねたんだ悪魔の仕業』と言っていたそうですが、まさにカルト的な要素を持っている。同教団は他の教会の礼拝に信者を潜り込ませ、その教会を乗っ取る形で組織を大きくしてきました。現在も続いていて、感染は他教団、他教会にも拡大の恐れがある」と指摘する。

 一方、刑事告発されたことで同教団に圧力がかかり、最悪の事態も懸念されている。

 イ教祖は「最後の審判の日には14万4000人を天国に連れていく」との終末思想を公言していた。「追い詰められたカルトの向かう、教祖による信徒の集団自死の扇動です。思い出すのは1978年に、南米ガイアナで起きた人民寺院事件です」(但馬氏)

 人民寺院事件とは、ジム・ジョーンズ教祖率いる宗教教団が、カルト化を問題視する米下院議員らの視察に対し、視察団関係者を殺害したほか、900人以上の信者とともに集団自殺したもの。

「追い詰められたカルトの攻撃性が内側に向かったのが人民寺院で、外に向かったのはオウム真理教のサリンテロです。イ教祖は88歳。先の短い身です。このまま世界規模でコロナ蔓延の責任追及が続けば、いっそ信者を道連れに天国へと、狂気の選択に走る可能性も大いにある」(但馬氏)

 これまでも同教団は政府や貿易当局に協力してきたと声明を出し、今回のイ教祖の謝罪も刑事責任の追及を逃れる狙いがありそうだが、予断を許さない状況だ。