新型コロナウイルスの感染拡大で、手洗いやうがいの励行など予防対策に関心は高まるが、症状が出た場合の対応には課題だらけだ。ウイルス検査を巡る“たらい回し”“中ぶらりん”が深刻化してきている。

「国民の間では、『感染拡大を抑える』と政府が言ったら、行政機関は安倍総理大臣に忖度するので、感染者数を抑えようとして検査しなくなるとの疑心暗鬼が広がっている」と立憲民主党の川内博史衆院議員は、予算委で加藤勝信厚労相に問いただした。

 感染が疑われても、検査どころか受診も拒否されるケースが相次いでいる。厚労省は強いだるさ、息苦しさ、37・5度以上の発熱が4日間以上続いた場合、「帰国者・接触者相談センター」に電話で問い合わせるよう促している。この内容によって、感染が疑われる場合、「帰国者・接触者外来」を設けている医療機関への受診が勧められる。さらに同機関で医師がPCR検査の必要有無を判断する流れになるが、検査までにはたどり着かずに、対症療法や自宅安静が相場となっている。

 川内氏はPCR検査のボトルネックとなっているのは、厚労省の内部通知にある「感染者との接触歴の有無など総合的に判断」との一言を指摘。

「すでに感染経路が明らかでない患者が発生している事態で、接触歴の有無などの言葉が検査の条件と誤解を与えている。外すべきだ」(川内氏)

 検査要件を巡っては、中国湖北省の渡航歴がある人との接触有無、いわゆる“湖北省しばり”があり、今月中旬以降は、外れていたが、表現を変えただけというのだ。

 厚労省では新型コロナウイルスに感染しても8割が軽症とされ、重症者対応に軸を置いている。医療現場でも疑い例のすべてに対応していたらパンクする危惧があり、検査には人数調整している実情がある。

 加藤厚労相もそんな事情を踏まえつつ「保健所において、必要な検査ができるように、もう一回徹底したい」と回答するしかなかった。

 日本国内では27日、感染者数はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を含め計919人に拡大した。PCR検査が容易に実施できるような状況になれば、1桁増えるどころか、10万人規模に膨れ上がるとの医療関係者の見方もある。