有事への対応に疑問符がついてしまった。“ポスト安倍の一人”との呼び声も高かった加藤勝信厚労相(64)の評判が急落している。もちろん理由は日本を席巻している新型コロナウイルスへの対応だ。17日も加藤厚労相は、発熱したら会社を休むよう国民に呼びかけたが、その間の休業補償への言及はないまま。クルーズ船への取り組みも海外から「第2の感染中心地」と言われる始末。政府関係者は“ポスト安倍”脱落を指摘した。

 厚生労働省は17日、新型コロナウイルスについて相談や受診の目安を公表した。風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続くか、強いだるさや息苦しさを感じた場合には保健所などに相談してほしいと呼びかけるとともに、発熱などの症状がある場合は学校や会社を休んでほしいとも訴えた。しかし、会社を休んだ場合の国としての休業補償についての話はなく、効果は薄そうだ。

 この発表の記者会見を行ったのは加藤厚労相だった。“ポスト安倍の一人”だが、新型コロナウイルスが騒動となって以降、評判が急落している。政府関係者は「ここまで新型コロナウイルスが日本国内で蔓延してしまった理由の一つは、厚労省の危機感が薄かったことによります。チャーター機で武漢から邦人を帰国させたのはいいですが、検査せずに帰った人がいたり、隔離のための部屋が足りなかったりと対応がチグハグ。新型コロナウイルスを甘く見ていたのでしょう」と指摘した。

 当然、組織のトップである加藤厚労相を見る目は厳しくなる。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応でもつまずいている。感染者が増え続けているのに船内に乗客をとどめ続けて、結果的に感染をより拡大させてしまった可能性が浮上。海外メディアから「こうしてはいけないという見本だ」と批判され、米国などは同船から自国民を救出するためにチャーター機を飛ばしたほど。17日には新たに乗客から99人の感染者が判明し、延べ1723人を検査し454人が感染したことになる。

 テレビ出演でもやらかした。16日のNHK番組で加藤厚労相は咳を連発。厚労省は「咳エチケット」として、咳をする際に手で口元を押さえないように呼びかけていた。その手で触ったドアノブなどにウイルスが付着するからだ。しかし、加藤厚労相自らテレビで咳エチケットに違反する失態。NHKから国民を守る党の丸山穂高氏が「大臣が感染症テーマのテレビに出て、咳を手でというシュールさ含めて危機対応に失敗しているかと」とツイートしたように、厚労省の不手際を加藤厚労相が全部しょい込んでしまっているかのようだ。

 加藤厚労相は大蔵(財務)官僚から政界に転身。元農水相の故加藤六月氏の娘と結婚し婿入りしていた。同じ“ポスト安倍”である岸田文雄政調会長や菅義偉官房長官に比べると地味だが、安倍晋三首相にかわいがられていた。自民党関係者からは「派手さはないが堅実なタイプで意外にハマるかもしれない」と期待される人材だった。

 しかし、現状では新型コロナウイルスの対応に失敗しつつある。「騒動が落ち着いたあと、誰が責任を取るんだって話になったら彼の名前が挙がるでしょう」と前出の政府関係者。ピンチはチャンスでもあったが生かせなかった。