新型肺炎「国内蔓延」の恐怖 全国各地で次々と感染者・国内初の死者も出た

2020年02月14日 16時00分

感染経路不明の新型コロナウイルスの感染者が続々と出ている(中国疾病予防コントロールセンター、GISAID提供=ロイター)

 水際作戦に気を取られていたスキに、日本でも新型コロナウイルスの感染が広まっていた――。発生源の中国湖北省・武漢からのチャーター機帰国者や、感染者が膨れ上がる大型クルーズ船での動向に心配が寄せられる中、13日に国内で初となる死者が出れば、今月5日以来となる国内での感染者が、各地で続々と判明した。もはやどこに感染者がいてもおかしくない危険な状況となっている。なお、同ウイルスによる肺炎の死者は中国本土で1483人、感染者は6万4627人となった。

 13日、クルーズ船では新たに44人の感染者が確認され、計218人になり、衝撃が広がっていた矢先、東京や和歌山、千葉など、全国各地で新たな感染者が判明。それもタクシー運転手や外科医だったことで、恐れていた国内感染の拡大が現実のものとなった。

 千葉県は13日、同県内に住む日本国籍の20代男性の感染が確認されたと発表。男性は会社員で、発熱後に3日間勤務した。感染患者との明確な接触は確認できていないとしている。

 また、都内に住む70代の個人タクシー運転手の男性は、主に羽田空港と都心を行き来している中、先月29日に発熱。今月6日に入院し、13日に感染が確認された。

 発症前の2週間以内に、中国湖北省や感染者の多い浙江省に渡航したことや、羽田空港に行ったり海外の訪日客を乗せたりする機会はいずれもなかったと話しているという。さらにこの日、国内で初めての新型肺炎による死亡者となった80代女性は、この男性の義母だった。

 先月末に中国人観光客を乗せたバス運転手と、ツアーガイドの女性が感染し、閉鎖空間となるバスやタクシーでは、乗務員のマスク着用、アルコール消毒液をスプレーするなどの対策が呼びかけられていた。

 不特定多数が出入りするため、運転手はスーパー・スプレッダー(強い感染力を持つ患者)にもなりかねない。

 ただ、客が乗降するたびにアルコール噴霧や座席の拭き取り作業をするのは困難ともいえる。

 実際、運転手感染のニュースが伝わった夜、都内のタクシー待機所をのぞいてみると、10台中マスクを着用している運転手は、わずか2人しかいなかった。

 また和歌山県の「済生会有田病院」に勤務する50代の男性外科医は先月31日に発熱し、今月10日に入院。13日に感染が確認された。中国から来た人との接触は不明という。既に同僚男性や患者の計3人が肺炎を発症し、院内感染が疑われるため、病院は新規の患者受け入れを停止した。

 クルーズ船の検疫官が感染したのと同様、細心の注意を払っているはずの医療従事者が感染者となったことに県もショックは隠せず、対策本部を設置し、対応に追われている。

 ただ、これらの事態は予想されたものでもあった。日本感染症学会は今月3日付で無症状感染者が確認されたのを受けて「国内にウイルスが入り込み、すでに市中において散発的な流行が起きていてもおかしくない状況」との見解を示していた。

 先月末からの中国の春節休暇時期に日本には大挙、武漢を含めた中国人が入国しており、潜伏期間を経て、全国に広がっていくとみられていたからだ。この日、一斉に明らかになった死者や感染者は見解通りの展開で、全国各地でさみだれ式に感染経路不明の感染者が出る新たなフェーズに突入したともいえる。

 厚労省はこれまでウイルス検査の対象を湖北省の渡航歴がある人と接触し、症状がある人としていたが、13日に浙江省も追加した。

 ただ、この基準はもはや意味をなさない可能性があり、医療関係者からは弾力的な運用を望まれている。

 防災アナリストの金子富夫氏は「日本は医療機関が充実しているとはいえ、感染症に対しての初動は鈍く、対処能力がないばかりに後手に回るばかり。また国民も安全・安心が染みついてしまい、いまだ“隣の中国で起きている病気”と他人事になっている方も多いのではないか。感染を少なくするために役所は衛生管理を繰り返し、呼びかけるしかなく、手洗い、うがいを徹底してもらいたい」と話す。

 国内の感染確認は死亡した女性やクルーズ船乗客らを含め251人となった。国内でパンデミック(爆発的感染)の事態を引き起こさないためにも各自の感染対策が望まれるところだ。