【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、世界各国に広がる“中国人お断り”措置。特にナーバスなのが、中国と国境を接する国々だ。ロシアやモンゴル、カザフスタンが3日までに国境検問所を封鎖し、“仲良し”の北朝鮮までもが中国との国際列車の運行を取りやめた。長大な国境線を有するアジアの大国が今や“陸の孤島”になりつつある。

 最北部で中国と接するベトナムは、主要な通行路になっている3か所のイミグレーションで検疫態勢を強化し、中国人への観光ビザ発給を停止、国境を越えた交易の制限に踏み切った。国内感染者は3日までに8人(ベトナム人6人と中国人2人)で、ほとんどが業務研修を終えた湖北省武漢からの帰国者だった。うち1人は感染者と接触したホテル従業員。

「ベトナム北部では観光をはじめ、中国への依存が大きい。中国南西部の広西チワン族自治区・東興市との間を結ぶモンカイ国境は、とりわけ両国の“大動脈”になっていて、年間取引額は170億ドル(約1兆8700億円)に及ぶ。感染拡大はなんとしても食い止めたいところ」とは首都ハノイ在住記者。

 壊滅危機を迎えているのが、ベトナム北西部ラオカイと国境を接する中国雲南省の河口(ヘイコー)だ。町全体が中国人向け歓楽街で、中心部にはいかがわしいマッサージやカラオケ、大人のオモチャ屋、置き屋などが軒を連ねる。そうした場所で働く風俗嬢のほとんどはベトナム人。

「国境を越え、河口に入れば、ベトナムよりいくらか物価が高い。稼ぎが良くなるから、越境して体を売るベトナム女性が集まっていた。それにこの周辺は深い山岳地帯で少数民族の宝庫と呼ばれている。現金収入に乏しい山の女性たちも河口に下りてきて、夜の商売に就いていたとみられる」(前出記者)

 だが、風俗店という密室での濃厚接触は、この時期はあまりに危険と、ベトナム人女性が続々と撤退しているという。「もはや歓楽街は風前のともしびだ」と、アジアに詳しい風俗ライターはこう嘆く。

「河口はただでさえ、近年は中国当局の取り締まりが厳しくなっていた。人身売買の拠点とみなされ、上の階が置き屋として使われていた名物の市場も取り壊され、昨年5月にも大規模摘発があった。格安でベトナム美女と遊べる国境エロタウンとして、昔から日本人の風俗マニアにも知られた場所だったが、肺炎禍でとどめを刺された格好」

 国境では、両国の経済格差を利用した歓楽街が栄える街も多いが、中国周辺国ではこうした地も次々と封鎖が進みそう。ただ人やモノの流れをストップさせていたら、経済的悪影響は広がるばかり。中国の周辺国は難しい選択を迫られそうだ。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。