新型肺炎で中国全土パニック“武漢人狩り”も

2020年01月28日 16時30分

 中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の発症者が、中国共産党系メディアによると、中国本土で2839人となり、死者は82人に増えた(28日未明)。北京市でも初めて死者1人が出た。感染は日本をはじめ世界14か国に広がった。アウトブレーク寸前の事態に中国政府は、武漢を中心に湖北省各地で公共交通や許可された車以外の通行を禁止し、封鎖状態にしている。

 武漢から東に800キロ余りの上海にまだとどまっている日本人駐在員が現状をこう語る。

「感染拡大を防ぐため、中国全土でさまざまな法律が一夜にして決められ、施行されている。湖北省はもちろん、上海西北の南京市(江蘇省)などでは、公共の場所でマスクをつけてないと罰せられると決まった。中国南東沿岸の広東省では、刑事罰が科される。マスクの価格つり上げも禁止で、こちらはすでに逮捕者が出ている。湖北省の西・四川省では、集まって食事するのが禁止に。北京のお隣・天津市の公務員には、春節(旧正月)休暇を切り上げて、対策のため出勤する指令が下った。また全土で野生動物の取引が禁止になった」

 武漢から逃げ出した市民は、悪質な場合「伝染病防治法」に問われ、懲役3年以上7年以下が科されることに。だが、人口1100万人の武漢市から、実際は500万人がすでに脱出したと言われる。

 武漢市当局が都市封鎖した23日より前、上海などへ車で脱出した地元の若者たちは、こぞって車中から自撮りをアップし、炎上のタネになった。

「そうした中、“武漢人狩り”が中国全土で広がりつつある。地方の農村では、村民が自警団をつくって湖北省ナンバーの車を排除する『封村』が行われている。中国最南端の島・海南省でも、湖北省ナンバーの車が大量に止まっていたことで、地元民は大騒ぎ。武漢人と見れば通報するような動きも各地で出ている」(駐在員)

 逆にテレビでは、武漢を応援する詩が朗読されたり、武漢市民への連帯と、第一線に立つ医療関係者たちへの激励、また「中国は必ずこの戦いを勝ち抜く」という決意を示す番組がたくさん流れている。中国当局は、新型肺炎を「明らかに国を揺るがす戦争だ」と強調し、この状況下であえて武漢に赴く老医師の姿を放映し「人民英雄」とたたえるなど、人々の愛国心に訴えるキャンペーンを展開中だ。

 そしてこの春節休みで日本を訪れている中国人は、マスクを買い占めている。中国の各地で深刻なマスク不足が起きているからだ。

「“マスク着用令”のほか、マスクを二重、三重にすると感染しにくくなるなんて噂もあって、買い占めばかりか、捨てられた使用済みマスクを拾って売るヤカラまで出てきた。地方ではとりわけ不足していて、麻雀やポーカーの賭け金代わりにマスクを賭けるのが流行に。そんな写真がよくウェイボー(微博)などSNSにアップされているよ」(駐在員)

 混乱が広がる中国では、例えば「HIV治療薬がコロナウイルスに効くかも」なんてトンデモ話がまことしやかに流布されるありさまだが、政府最大の目的は首都防衛で、北京での感染拡大だけは何としても阻止したい考え。すでに地方民の流入を防ぐべく、省をまたぐ北京発着の長距離バスは全面運行停止に。飛行機と高速鉄道、下道もいつ封鎖されるか分からないと、市民は不安を感じている。

「北京は今、空気がとても乾燥していて、ウイルスが蔓延しやすい。武漢封鎖などさまざまな策で少しでも時間を稼ぎ、防疫態勢を整え、湿度が高まりウイルスがいくらかでも抑えられる春を待ちたいところ。SARSのときも同じだった」(前同)

 春節休暇が終わり、人の移動の激しさが一段落する今週後半から、北京では厳戒態勢が敷かれ“首都決戦”が始まると、地元民は噂している。