中国三千年の因習にもSNS時代「死体婚」めぐる闇料金設定

2020年01月23日 16時00分

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】中国河南省の某町で墓荒らしが相次いでいる。北京の地元紙「新京報」によると、昨年10月までの2年間に、遺体や遺骨を掘り起こされ盗まれる被害が14件。「荒らされたのは全て女性の墓。“死体婚”の花嫁にするための盗掘だと噂されている」と北京在住記者は声を潜める。

 死体婚は「陰婚」とも呼ばれる。未婚のまま死んだ、特に男性を親族が哀れんで「あの世での伴侶」をあてがい、死体同士で結婚させる風習。死者を独身のまま葬ると、親族が結婚できなくなると信じられており、中国では3000年以上前の殷王朝時代から続くといわれる。この因習が残る地域では独身男性が亡くなると、同時期に他界した女性の遺体に対し“縁談”が舞い込む。そして結婚式と葬式を同時に行い、埋葬するのだ。

「中国は人口の男女比がいびつで、男が3000万人も上回る。跡継ぎは男に限るという考え、また2015年まで続いた一人っ子政策により、妊娠しても女の子と分かると堕胎する家が多かったからだ。当然、死体婚も“嫁不足”で、女性の墓の盗掘が横行。しかも、大規模な闇ビジネスになっている」と同記者。

「新京報」によれば、死体売買容疑で捕まった墓荒らしの男の根城は大病院の遺体安置室だった。この病院の医師と親しかった男は、1日100元(約1600円)の家賃を払い、遺体一体につき100~200元(約1600~3200円)の保管料を払い、裏稼業を黙認させていた。

 どこでどんな女性が亡くなったか地域の情報を集めてくるスタッフには1000元(約1万6000円)、遺体同士のマッチングを風水で行う“仲人”には2000元(約3万2000円)の謝礼を払っていた。ある取引で男は“花嫁”を6万8000元(約108万円)で売り、死体婚後、新郎新婦の遺体を改めて埋葬。遺族は満足して儀式を終えたという。男は懲役2年、他の関与者は懲役7月~1年の実刑判決を受けた。だがこの手の事件は後を絶たず、ある村では妻の墓が荒らされた20日後、すぐそばの母親の墓が盗掘されたケースも。死んだ女性の奪い合いは激しさを増している。

 同紙の取材に死体仲介人は「交通事故が多発する雨の日は死体が出やすい。それに若い女の死体ほど高い値がつく。20歳前後なら10万元(約160万円)から始まり、希望者同士がオークションのように値をつり上げていく」とか。

 こうした死体売買で活用されているのがSNSだ。「30歳くらいの陰婚相手求む」「病死したばかりの11歳児の死体あり」といった生々しいやりとりが載っている。一方、墓荒らしのあまりの横行ぶりに、墓守を月6000元(約9万6000円)で雇ったり、墓に監視カメラをつける市民が増えている。盗掘できない頑丈なセメント製のひつぎもよく売れるという。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。