高橋三千綱氏「苦役列車を読んでヤル気をもらった」

2011年02月24日 16時00分

<西村賢太、高橋三千綱氏 衝撃の芥川賞作家対談(3)>

 ――ところで「苦役列車」のテーマは

 西村賢太:恥ずかしい話、書くのに精一杯で理由は後付けばかりなんですよ。持ち込みだったから載っけてもらおうと必死で、あまり確認もせず。ある意味で作家じゃないんですよ。

 高橋三千綱:いやいや、同じ職業だと分かるけど、どんだけ苦労してるかってタイトル見れば分かるよ。オレ、現代の梶井基次郎(※1)が出てきたのかと思ったよ。あなたの場合はストーリーっていうより、短い文で想像力をかき立てるから面白いんだよ。物語で、あざとくだまそうって人じゃない。オレは「苦役列車」を読んで再びヤル気をもらった気がしたよ。

 西村:そんな、過分なお言葉ですよ。

 高橋:いや、本当に。作家も30年もやってると書くのがなくなってきてね。それこそ〝苦役列車〟みたいに再び動くのって力いるじゃない。でも、あなたの真面目な姿勢に突き動かされたよ。情熱がかき立てられる小説に30年ぶりに合いました。感服した。それともう一つ感謝しなきゃいけないと思ってることがある。

 西村:何でしょう?

 高橋:藤澤清造(※2)の没後の弟子を自称しているそうで、全集を自分で作るんだって?

 西村:はい、出します。全7巻で。一度、印刷所に依頼しに行ったら1200万円かかるとふっかけられましたけど。

(続く  西村賢太氏「借金しまくりました」


(※1)梶井基次郎 1901年2月17日生まれ。近代日本文学の小説家。25年、同人誌「青空」を創刊し「檸檬」「城のある町にて」などの詩情豊かな作品を発表。文壇に認められたが、肺結核のため32年、32歳の若さで死去した。

(※2)藤澤清造 1889年生まれ、1932年没の私小説家。印刷所勤務や港湾労働者を経て、作家として活躍。酒と悪所通いで精神に異常をきたし、芝公園で凍死した。