17日に発令される警察庁人事で、ある警察官僚の出世が話題になっている。

 警察庁の第28代長官に松本光弘次長(58)、第96代警視総監に斉藤実副総監(58)が就任する人事が14日、閣議で承認された。この人事自体は順当なものだったが、注目は警察庁の次長に中村格官房長(56)が昇進する人事が発表されたことだった。

 この中村氏の名は、昨年12月、ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)が元TBS記者の山口敬之氏(53)を相手取り、性暴力で精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求めて勝訴した“事件”でも登場する(山口氏は控訴)。

 伊藤さんらによると、2015年4月の事件を受け、警視庁高輪署が準強姦容疑で逮捕状を取り、同年6月、帰国する山口氏を署員が成田空港で待ち構えていたが、突如、警察上層部からストップがかかった。

「本件は本庁(警視庁本部)で預かる」と逮捕状執行停止を命じたのが当時警視庁刑事部長を務めていた中村氏だった。

 これにより、刑事事件としては同年8月、山口氏は書類送検され、翌年7月、不起訴処分となった。その後、伊藤さんが民事で提訴したという経緯がある。

 中村氏はその後、警察庁に戻り、組織犯罪対策部長を経て、18年9月には官房長に就任していた。出版関係者は「山口氏は安倍政権に近い人物で、その逮捕を政権が止めさせたという疑惑はいまだ根強い。政権の意を受け、菅義偉官房長官の秘書官などを歴任した中村氏が逮捕を止めたという構図」と語る。

 中村氏は一部メディアに、山口氏の逮捕状執行停止命令を出したことは認めたものの、政治介入は否定していた。

 警察関係者は「民事裁判では山口氏が控訴し、今後も裁判が続くとはいえ、警察が逮捕を断念した事件で、その人物が敗訴というのは都合が悪い。中村氏は東大卒のキャリアで、今回の次長の次は警察庁長官の席も約束されたようなものだが、マスコミは今後も“あの中村氏”と書き立てるでしょう」とみている。