浮気はイブの前夜に――。今年もクリスマスが近づいてきた。ケーキを囲んで家族団らん、あるいは奥さん・旦那さん、彼女・彼氏とデートが定番だが、クリスマスを過ごしたからといって夫婦仲、恋人仲は安泰ではない。実は…浮気はクリスマス前後にひっそりと行われている。そんなクリスマス浮気の実態を、総合探偵社ガルエージエンシーの現役探偵・濵川卓氏が克明にリポート。コレを読んだらパートナーを疑ってしまう!?

 ある年の12月23日、埼玉県在住の男性(39=当時)の依頼で妻A子(38=当時)の浮気調査を行った。この時期、我々探偵にとっては1年を通して一番の稼ぎ時である。

 20年探偵をやってきて感じたことは、調査対象となる人物は、クリスマス本番である24、25日は家族や本命の異性と過ごし、その前後に浮気相手と会って、パートナーから疑惑をそらそうとする傾向が多くみられる。

「女友達と池袋で会って1泊してくるから帰りは明日の午前中になる」と言って旦那からの許可をもらったA子は、午前11時ごろ自宅を出て電車に乗った。池袋に到着すると西口で待ち合わせをしている様子。鏡で髪形や化粧の具合を気にするA子を見て、私はこの後、会うのは女友達ではなく男だなと確信した。

 しばらくすると、手を振りながらA子に近づく男(以下B男)が現れた。A子はこれまでにない笑顔を見せ合流し、2人は歩き始めた。B男はA子よりかなり若く、20代半ばくらい。身長は180センチほどで、かなりのイケメン。お世辞にもあまりおキレイとは言えないA子とは周りから見て不釣り合いに映るだろう。

 2人は映画を見た後、ハンバーグ店で少し遅めのランチを食べ、水族館へ行った。水族館が入る商業施設を散策し、かくして2人は東口にあるラブホテルへと入っていった。2人はこのホテルでイブの前夜を過ごすのだろう。ホテルへ入る瞬間をビデオカメラに収めた後の私の任務は、翌朝2人がホテルから出てくる瞬間をビデオカメラに捉えることだ。

 ホテルに入った時間と出た時間で滞在時間を証明する。たとえ男女の行為を確認できなくとも言い逃れのできない不貞の証拠だ。それがラブホテルであればなおさらである。

 次の日、午前9時ごろ、手をつなぎながらホテルを出るA子とB男を確認した。2人は真っすぐ池袋駅へ向かった。JRの改札をくぐり、埼京線のホームへ。大宮方面行きの電車を2本ほど見送った後にA子のみ乗車し、2人はそこで別れた。

 別れを惜しむ様子がA子の方にだけ見えたのは気のせいだろうか。ここからはB男を尾行して宅割り(居住先を判明させること)である。

 A子が乗った埼京線の発車を見届けたB男は足早に山手線外回りのホームへ向かい、電車に飛び乗る。なにやら少し急いでいる様子だ。日暮里駅で下車し、改札階へ上がる。「意外と近くだったか」と少し気が抜けた感じがしたのもつかの間、B男は京成線乗り換え口付近にあるコインロッカーから大きめのキャリーケースを取り出した。

「これは結構やっかいなことになったな」と気を取り直して尾行を継続。京成線の乗り換え口をくぐり、B男が向かったのはスカイライナー専用ホーム。探偵歴20年の私だが、さすがに宅割りで海外に行った経験はない。

「成田空港!? まさか海外!?」。せめて搭乗する航空会社が確認できれば…。成田空港に到着したB男は出発ロビーへ。某航空会社の国際線チェックインカウンター付近で1人の女性と合流した。

 私は目を疑った。B男と合流したこの女性、年齢は30代後半から40代前半で、A子とよく似た風貌なのだ。B男はこの女性と手続きを済ませ、国際線の保安検査場へ消えていった。調査はここで終了。

 クリスマスは海外でこの女性と過ごすのであろうB男にとって、A子は本命ではなかったようである。(探偵・濵川卓)

☆はまかわ・すぐる ガルグループの調査部長を経て、2009年からガルエージェンシー池袋の代表。「我々には日常の調査も依頼者様には一生に一度のご依頼」がモットー。