過去最大級の台風19号は東海沖を北上し、12日の夕方から夜にかけて東海か関東に上陸する見通しだ。東日本の暴風や大雨は記録的なレベルに達すると予測され、気象庁は11日「降水量は1200人を超える犠牲者を出した狩野川(かのがわ)台風(1958年)に匹敵する恐れがある」とした。9月の台風15号対応でミソをつけた政府、自治体にとっては今回の対応は汚名返上の機会だが、またも空回りの気配が…。

 台風19号の接近を前に、東京都内では11日、食料品や防災グッズを求める人の姿が目立ち、スーパーなどでは商品が品切れとなり、棚は空っぽになるところが続出した。

 東京都武蔵野市のスーパー店員は「連休に備えて商品を揃えましたが、お米やカップ麺、ペットボトル類がすべて売り切れました。台風でお客様の対応が速いですね」と慌ただしい。

 24時間営業の家電量販店では、防災用品を備える客が深夜まで後を絶たなかった。都内の大学に通う女子大生は「スマホの予備バッテリー、懐中電灯とガムテープを買いました。15号では千葉で大規模な停電が発生したので懐中電灯は必需品。ガムテープは窓ガラスが壊れるのが怖いので田舎の親に言われて購入しました」と話した。

 新幹線は12日の計画運休が決まり、主要駅では急な予定変更を余儀なくされた乗客が窓口に長蛇の列を作った。週末に予定されていた大学入試も延期になった。

 台風直撃で正念場となるのは政府や自治体の対応だ。台風15号を巡っては、政府は内閣改造と重なり、関係閣僚会議を開催しなかったことで野党から追及された。今回は11日に同会議を開催し、安倍晋三首相は「自衛隊が必要な場合は要請を待たずに救援活動に当たる」とスクランブル態勢を強調した。防衛省は東京都庁や千葉県庁など8都県に自衛隊の連絡員を派遣し、万一に備える。

 15号が上陸した日、千葉県の森田健作知事は県庁に登庁していなかったことで、対応が後手に回ったとヤリ玉に挙げられた。森田氏は汚名返上とばかりに12、13日の両日、県庁に詰め、対応に当たると宣言。すべての市町村に職員を派遣するとした。

 元東京消防庁消防官で防災アナリストの金子富夫氏は11日午前、地元の東京・大田区を回り、住民に警戒を呼び掛けた。

「テレビでは、何かを用意してくださいの話ばかりで、具体的にどこへ避難するかの情報がない。そもそも台風が来ていることを知らない人もいる。政府や自治体のトップが指揮棒を振り続けて、防災無線を使ってでも、注意喚起していかないといけないが、国は気象庁任せで、国会では予算委員会を開いている。なにより守らなくてはいけないのはまず国民の命」と憤る。

 東日本に影響を及ぼすのはほとんどの職場が休みの土・日曜日でタイミングが良くも思えるが、悪い面もあるという。

「役所は3連休で、対応に当たるといっても人数は一部の職員でしかない。本当は関係する職員は休日返上、病院も開けて、対応しないといけないが、危機管理の意識が低い。自分たちは大丈夫だろうという“正常性バイアス”が働いてしまう」(金子氏)

 15号で千葉県内は93万戸が大規模停電に見舞われ、屋根や瓦が吹き飛ぶなどして約3万4000棟の住宅が被災した。
「関東は耐水、耐風にそこまで強くない建物が多い。吹き飛んでしまうところが相当出てくるんじゃないか」と金子氏は懸念する。

 超巨大台風はどんな被害を及ぼすかは未知数だ。関係機関は教訓を生かし、しっかり対応してほしいものだ。

 なお、東京電力によると、12日午前8時半ごろ、千葉県で約48万戸の停電が確認された。東電が原因を調べている。