2011年3月の東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣の勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)に対し、東京地裁は19日、いずれも無罪の判決を言い渡した。求刑は禁錮5年。

 初公判は17年6月で、今年3月に結審するまで計37回の公判が開かれた。3人は海抜10メートルの原発敷地より高い津波が押し寄せてくることを予見できたのに、原発の運転を続け、福島県大熊町の「双葉病院」と「ドーヴィル双葉」(介護老人保健施設)の入院患者らに避難を余儀なくさせ、44人を栄養失調や脱水症状で死亡させるなどしたとして強制起訴された。

 争点は3人が自然災害を予見し、事前に対策を講じることができたかどうかだ。3人は政府系機関や担当職員から想定を超える巨大津波の可能性を聞いてはいたが、対策を検討している最中に震災が発生したと主張。検察官役の指定弁護士は津波対策が完了するまで原発の運転を停止していれば、事故は回避できたと訴えていた。

 注目の判決は「責任なし」。法曹関係者によると「東京地検が2度にわたって不起訴としている案件。判決は想定通り」という。勝俣被告の知人も「本人は無罪を確信していて、日々の会話に裁判の話が出ることもなかった」と話している。

 今年4月に起きた暴走車による“池袋母子死亡事故”では、逮捕されない加害者の飯塚幸三氏(88)が、元通産官僚で工業技術院の元院長であったことから、ネット上で「上級国民」なるワードが誕生した。

 だが、真の「上級国民」は勝俣氏らと言っても過言ではない。前出の知人は3・11の震災直後に垣間見た“特権エピソード”を明かす。

「原発事故で日本が大変なことになっているさなか、勝俣氏は体調のすぐれない親族女性を東電病院(すでに閉鎖)に入院させていた。それもVIP病棟。勝俣氏の口添えがなければ、無理ですよ。女性は部屋ですしばかり食べていたそうです」

 これが日本の現実なのか――。