【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】タイのビーチリゾート・パタヤで7月26日、タイ人男性(24)が電子たばこ不法所持で捕まった。

「タイでは電子たばこや加熱式たばこが違法。2014年に発令された電子たばこ禁止条例で規制され、不法所持は最高で懲役10年、または罰金50万バーツ(約175万円)」とは首都バンコク在住記者。

 問題は、警官たちがその男性に対し、警察へは行かず、その場で“処理”するなら「3万バーツ(約10万5000円)でどうだ?」と賄賂の支払いを持ち掛けてきたことだ。地元ウェブメディア「ザ・パタヤ・ニュース」によると、男性は手持ちの現金5000バーツ(約1万7500円)と、2万バーツ(約7万円)相当のブレスレットを献上し“釈放”されたという。だが「これは賄賂の強要だ」と憤慨した男性が、後でパタヤ警察に被害を訴え、大ニュースに発展した。

「今回は珍しくタイ人が逮捕され話題だが、電子たばこ所持で逮捕されるのは圧倒的に外国人が多い。タイでは電子たばこが違法ということを知らない観光客を“狙い撃ち”して、重点的に取り締まっている。パタヤでもこれまで欧米人や中国人らが逮捕され、やはり高額な賄賂を要求されたとSNSなどでは問題になっていた」(同記者)

 バンコクでは警察の格好のターゲットが日本人だ。事件化されたくなければ賄賂を渡すよう持ち掛けられるという。警察がよく張り込んでいるのは、日本人向けのカラオケ店やクラブが並ぶタニヤ通り、日本人旅行者が多いスクンビット通り、ゴーゴーバーが密集するソイ・カウボーイ、ナナプラザなど。

 日本にいるのと同じノリで吸い始めるのを待って、電子たばこを取り出した途端にお縄というわけ。取り締まりはかなり厳しく、相当数の日本人が罰金という名の賄賂を徴収されているようだ。

 日本人は空港でも、たばこ狙いで抜き打ちの持ち物検査を受けることがある。これは電子たばこの摘発だけでなく、紙巻きたばこのチェックも兼ねている。タイに持ち込める紙巻きたばこは1人あたり1カートンまでだが、それを超えて荷物に隠している日本人が非常に多いからだ。入国時に見つかると、多額の罰金を払わされるハメに。

 タイでは公共の場所、レストランなど飲食する場所では原則全面禁煙。たばこのポイ捨ては2000バーツ(約7000円)の罰金だ。その支払いを拒み、警察官とモメる旅行者もたまに見掛ける。

 電子たばこを禁じる背景には、タイたばこ専売公社の利権を守るためとか、外国製の電子たばこを持ち込まれたら税金が徴収できないからなどといわれている。ただ路上の屋台では時折、違法なはずの電子たばこがコッソリ売られていたりも。いずれにせよタイへ行く喫煙者は心しておくしかない。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「日本の異国」(晶文社)