吉本&かんぽ「辞めないトップ」の背景 下で働くサラリーマンの処世術

2019年08月01日 16時00分

謝罪した日本郵政グループの経営トップ。(左から)横山社長、長門社長、植平社長。3人とも引責辞任はしないという

 かんぽ生命保険の不正販売問題で、日本郵政グループの記者会見が31日に行われた。顧客に不利益となった恐れのある契約が、過去5年で18万3000件あったと発表。約3000万件の全契約を調査する。グループの持ち株会社・日本郵政の長門正貢社長、かんぽ生命保険の植平光彦社長、局員が保険を販売した日本郵便の横山邦男社長の3人が揃って謝罪したが、辞任はせず。同じような光景は吉本興業の岡本昭彦社長の会見でもあったが「大人力検定」で知られるコラムニスト石原壮一郎氏はどう見ているか。

 長門社長は「郵便局への信頼を大きく損ねたことで断腸の思い。深くおわび申し上げる」と話した。その上で責任問題に言及。「二度とこのようなことがないように対策をしていく。陣頭指揮を執ってまい進することが職責だと思う」と自らの辞任については考えていないと明言した。

 会見は約3時間にわたったが、のらりくらり。認知症の人に契約を結ばせたケースなどは特に悪質だったが「会社としてはチェック態勢を敷かせていただいている」(植平社長)などと核心に迫る回答はなかった。

 報道陣から「もうちょっと経営の責任を受け止めるべきではないか」と詰め寄られるも「(記者の意見は)論理の飛躍がある」と長門社長は辞任を口にすることはなかった。会見終了時には「責任は取らないんですか」と声が飛ぶほどモヤッとした会見だった。

 経営トップが辞任をしない会見といえば先日、多数の芸人が反社会的勢力のパーティーに出席したことが明るみに出たり、パワハラ告白もあった吉本興業の岡本社長のケースがあったばかり。大物芸人の加藤浩次から取締役退任を求める声も上がる中、大崎洋会長とともに1年間の年俸50%カットを発表したが、5時間超におよんだ会見でも辞意は口にしなかった。辞任だけが責任の取り方ではないとはいえ“肩透かし感”があるのは事実だ。最近の傾向として経営トップが辞任しないムードがあるのではないか。

「大人力検定」で知られるコラムニスト石原壮一郎氏は「『職責を全う』とは便利な言葉ですが、これは“ほとぼりを冷めるのを待つ”と同義語です。吉本もかんぽもトップが辞めないと下っ端のせいになってしまう。責任を取れるのはトップしかいない」と指摘。

 辞任しないのは経営トップだけではない。

「最近は政治家もスキャンダルがあっても辞めないですよね。強い人は辞めなくて、弱い人は辞める。政界の影響なのか簡単に辞めないのが強さの証しみたいな風潮があります」と背景を解説した。

 また、辞任しないことでコトの本質を追及されないよう仕向けている可能性もあるという。

「辞めないことで、『辞める辞めない』に話をそらせる狙いがあるのではないか。吉本なら反社会的勢力との付き合い、かんぽなら高齢者相手に反社会的なやり方で契約を取っていたことなど本質を突かれたら困るのでしょう。そらせる効果は出ている」と石原氏。

 吉本とかんぽのケースからは、サラリーマンの生きるべき道を学ぶことができる。

「部下としては『何で辞めないんですか』と聞くのは大人としてできない。口火を切ってしまうと『極楽とんぼ』の加藤浩次さんのように貧乏クジを引いたみたいになりかねない。かといって後輩が自分を見ていることを考えると、いいところも見せないといけない」(石原氏)

 そこで石原氏が、責任を取らないトップの配下で働く一般サラリーマンに勧めるのが“ホメ殺し”だ。

「『この状況で職責を全うするなんて私にはできませんよ』『その責任感の強さはどうやったら鍛えられるんですか』と言えば、当事者のトップにはストレートな褒め言葉になるけど、周りには皮肉に聞こえる。針の穴を通すようなコントロールが大人には求められます」(同)

 吉本問題でも、騒動に乗じて会社への不満を漏らした芸人への厳しい意見もみられる。サラリーマンは気楽な稼業という時代はずいぶん遠くなったようだ。