パッキャオ王座統一に沸くフィリピン 次期大統領候補の声高まる

2019年07月25日 16時00分

パッキャオは今やフィリピンの顔(ロイター=USA TODAY Sports)

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】史上2人目の6階級王者でWBA世界ウエルター級王者マニー・パッキャオ(40)が20日(日本時間21日)、米国ラスベガスで王座統一戦に臨み、スーパー王者キース・サーマン(30=米国)に2―1で判定勝ちした。2度目の防衛に成功したパッキャオに母国フィリピンは沸きまくっている。

「貧しい農家出身で、幼いころから路上で物売りをして家族を助けていた。そんな彼がボクシングに挑戦し、ライトフライ級から少しずつ体格を大きくし、階級を上げながら、パワーをつけ、世界の強豪を次々倒していった。国民はその姿に自分たちを重ね合わせて熱狂。パッキャオは『フィリピンの英雄』と呼ばれるようになった」とは首都マニラ在住記者。

 2008年、ライト級タイトルマッチのテレビ中継は、フィリピンで63・8%の超高視聴率を叩き出し、伝説になった。

 長年アジア最強ボクサーとして君臨してきたが、年齢にはあらがえず。15年、フロイド・メイウェザー・ジュニア(米国)との王座統一戦は「世紀の一戦」「偉大なる戦い」と言われたが敗戦。さらに右肩を負傷し、翌年引退した。だが、わずか4か月で電撃復帰するや、再び快進撃を始め、先日に統一王者となった。

 フィリピンでは、年齢を感じさせないパッキャオを称賛。地元紙「フィリピン・スター」は「10歳年下のサーマンよりも速く、力強く、そしてスタミナがあった」と評し、別の地元紙「ラプラー」は「フィリピン人の魂を見せつけた。年齢は全く関係なかった」とたたえた。「どのメディアも、40歳で王座統一を成し遂げたパッキャオの“おじさんパワー”に注目している」(前出記者)

 フィリピン国軍は「彼のテクニックと努力、敢闘精神は、我が軍にもインスピレーションを与えるだろう」と異例の声明を出し、国家警察も「彼はフィリピンに名誉と栄光をもたらしただけでなく、たくさんのフィリピン人に自信を与える」。政府まで「これは彼一人ではなく、フィリピン人全体の勝利」と公式声明を出し、まさに国を挙げての祝福ムードだ。

「パッキャオは現役の上院議員でもある。ただ、トレーニングのためか、プロモーターや俳優としても活動していて多忙だからか、めったに議会に現れないのが問題。なのに次期大統領候補という声もある」(前同)

 一昨年の誕生パーティーの席では、ドゥテルテ大統領からリップサービスとはいえ、後任に就くことを歓迎する発言も飛び出した。3年後の大統領選に出馬する可能性を見据え、軍や警察が持ち上げているという話も地元ではささやかれている。当の本人は「次の試合は来年くらい。議員の仕事もあるしね」と話している。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「日本の異国」(晶文社)。