中国恐れる香港デモの「若さ」 米との貿易戦争にも影響

2019年06月20日 16時00分

香港人4人に1人が参加した16日のデモ(ロイター)

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】香港で捕まえた容疑者を中国本土へ移送可能にする「逃亡犯条例」改正をめぐる混乱は、中国でほとんど報道されていないという。

「政治的にナーバスなネタの場合、マスコミ各社には独自取材や自社論評しないよう、お上からお達しが来る。だから各社とも、政府の発表通り『外国勢力の影響下にある暴徒が経済と法治に攻撃をしており、我が国は理性的な行動を呼び掛けている』と報じるだけ。だから、香港でいま何が起きているのか全く知らない人もいる」とは上海在住記者。

 そんな厳しい言論統制をかいくぐり、香港の状況を知ろうとする人もいる。中国のネット規制は、在中日本人の必須ツールでもあるVPNという回線を使い、海外経由することで突破できるのだ。そしてSNSで、当局にそうと分からないよう隠語を使い、デモへの賛意を表すのだ。

「天安門事件30周年の6月4日は、追悼の意味でロウソクや白い花の画像をアップする人が続出。また『5月35日』という言葉も盛んに使われた。5月30日+5日で6月4日を表すからだ。今回も同様に隠語や画像で香港デモを支持する人もいるが、すぐアカウントが凍結されたり、場合によっては公安が家まで来る。中国の締め付けは外国人の想像以上に厳しい」と同記者。

 16日には、香港史上最大の200万人デモがあった。中国当局がナーバスになるのは、こうしたアクションが実際、中国にダメージを与えつつあるからとの指摘もある。

「今の中国にとって最大の懸念であり問題は、米中貿易戦争。アメリカと互いに関税を掛け合い、中国経済は減速し世界中に悪影響が広がっている。今月28日の大阪でのG20で、中国はアメリカの自国優先と一国主義の身勝手さを世界中に訴えるつもりだった。アメリカはカナダやメキシコ、EU、それに日本とも関税でモメており、中国は国際会議の場で各国を味方につけようともくろんでいた」(前同)

 ところが香港デモにより状況は一変。「一国二制度」の原則や人権面から、G20で中国の姿勢が問題視されるのは確実だ。米国ばかりかEUもデモへの対応に注文をつけ、貿易戦争の件は米国有利に進むと思われる。歯ぎしりする思いであろう中国の首脳が、大阪で両問題についてどんな発言をするか注目だ。

 在上海記者によれば「中国はまた、香港デモを主導する学生たちの熱気、エネルギーが波及することを警戒している」という。「天安門事件、また1919年に激しい抗日デモを巻き起こした『五四運動』など、中国では学生が発火点となり全土に広がる政治活動が多かった。厳しい統制が敷かれた現在、民主化運動の活動家や支援者は圧倒的な少数派となったが、それでも当局は『学生』というキーワードに敏感になっている」

 香港を揺るがす若いパワーを、中国政府も恐れているのだ。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「日本の異国」(晶文社)