世界最高峰のエベレスト(8848メートル=ネパール、中国)で登山者の死亡事故が増加しており、山頂を目指す人たちによる「渋滞」が原因との見方が出ている。入山規制を求める声もあるが、エベレスト登山を観光資源とするネパール政府は、死亡事故と渋滞の因果関係に否定的だ。

 5月はエベレスト登山の最適シーズン。米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は今月26日、エベレストの山頂近くで登山者が列をなしている写真を掲載した。同月22日の撮影で、米国人登山者は同紙に、山頂は「卓球台2つほどのスペースに15~20人がひしめき合っていた」と話している。

 ネパール政府によると、今シーズンにエベレストで死亡した登山者は11人と、大地震による雪崩被害のあった2015年以降、最も多くなっている。山頂付近で渋滞により数時間身動きが取れなくなるケースもあり、携行した酸素を使い果たして死亡するリスクを専門家は指摘している。

 だが、ネパール政府の観光当局者は「死亡事故は悪天候が原因」と反論する。ネパール側からエベレストを登山する場合には当局からの許可証が必要で、今シーズンは過去最多となる381人に発行された。手数料は1人1万1000ドル(約120万円)で、アジア最悪レベルの貧困国のネパールにとっては貴重な収入源だ。

 経験の浅い登山者には許可証を出すべきではないとの意見もあるが、政府当局者は「十分な計画を立てることが重要」と述べ、制限は設けない考えだ。