【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】さる13日に投開票されたフィリピン中間選挙は、下院議員(291議席)、全国の知事や市長、そして国政に強い権限をもつ上院の半数(12議席)が改選となり、そのほとんどでドゥテルテ大統領(74)の支持派が当選した。

「特徴的だったのは、大統領の子供たち3人も立候補し、いずれも高い支持を受け当選したこと。ファミリーによる独裁も懸念されている」とは首都マニラ在住記者。

 中でも注目は、父親も長年ポストを務めた南部ダバオ市長に再選された長女サラさん(40)だ。「前回ダバオ市長を務めたとき、市内の土地トラブルに自ら乗り込み、現場にいた裁判所関係者に4発のパンチを浴びせた豪傑。ドゥテルテも頭が上がらず、父親の後を継ぐ次期大統領とも目されている」と同記者。

 一方、下院議員に当選した長男パオロ氏(44)は、何かとお騒がせだ。

「ダバオ市副市長を務めていた一昨年、中国マフィアと組み、覚醒剤の原料メタンフェタミンの密輸に関わっていると告発された。税関を通関中に見つかった問題のブツは、末端価格64億ペソ(約133億円)と膨大。野党は疑惑追及過程で、パオロ氏が背中に竜の入れ墨を彫っていると暴露し、これがマフィアとの関わりを示していると大問題になった。本人は上院で開かれた公聴会で密輸への関与を否定し、背中を見せることもプライバシーの問題だと拒否し結局ウヤムヤのまま」(同)

 ドゥテルテ氏は「麻薬戦争」と称し、密売人をその場で射殺する強行捜査を実行中だ。

 愛息の疑惑には、苦し紛れに「もし、パオロが本当に麻薬事犯であるなら、警官隊に射殺させる」とキレてみせた。そのパオロ氏はダバオ市の公式フェイスブック上で、美人な愛娘イザベルさん(19)と家庭問題から親子ゲンカする醜態をさらしたことでも知られる。

 そして次男セバスチャン氏(31)は、タレントから転身し、ダバオ市副市長に当選した。

「なかなかの甘いマスクで女性人気も高い。サーファー、ロックミュージシャンでもあり、フェイスブックとインスタグラムで計100万人近いフォロワーを持つインフルエンサー。ただ政治的手腕は全く未知数で、単なる遊び人という声もある。ちなみに彼も、いかついタトゥーを胸や両腕に入れている」(前出記者)

 大の家族思いで知られるドゥテルテ氏だが、さすがに「身内びいきもやりすぎ」という意見もある。一家による不正蓄財の噂も絶えない。ただ大統領本人の国民的人気の前には、こうした批判もどこ吹く風だ。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。