末期の膵臓がんの同級生に捧ぐ 佐藤優氏が“友情本”緊急刊行の狙い

2019年04月28日 16時00分

 本紙「マンデー激論」でおなじみの元外務省主任分析官で人気作家の佐藤優氏(59)が27日、東京都中央区の八重洲ブックセンター本店で「友情について 僕と豊島昭彦君の44年」(講談社)の刊行記念イベントを開いた。

 佐藤氏が同書を書くきっかけは昨年5月、埼玉県立浦和高校の同窓会で1年間同じクラスだった豊島氏と40年ぶりに再会したこと。それから5か月後、豊島氏は佐藤氏にメールで人間ドックの検査結果で、膵臓がんであることが判明し、もはや手術は不可能なステージ4であると診断されたことを告白した。

 佐藤氏は豊島氏に本を作ることを提案した。豊島氏は一橋大卒業後、日本債券信用銀行に就職した超エリート。当時の銀行は最も安定した業種とされたが、1998年に経営破綻し一時国有化される困難に見舞われた。

 佐藤氏は「豊島君と僕が生きた時代は、高度成長のバブルがはじけて日本経済が衝撃的な打撃を受けた」と話し、豊島氏をこう紹介した。

「(日債銀の破綻後)豊島君は新しい上司とのあつれきや同僚たちのリストラなど人生の荒波に襲われ2度、転職している。僕は『君が窮地に陥ったときの苦労や困難をいかに乗り越えてきたか、家族、職場の同僚や浦高の後輩たちに語ることは大きな普遍的な意味がある』と言いました」

 ステージ4の膵臓がんは余命数か月という場合も少なくない。緊急出版した狙いについて佐藤氏は「豊島君の持ち時間は限られている。友人を商業作品にしたのは心苦しい。でも自分たちが生きた証しを子供たちへ伝えるには一番効果がある」と語った。

 豊島氏は「みなさんに『元気ですね』と言われホッとしてる。体調的に苦しいのは抗がん剤の副作用。手足のしびれがある。今日、こういう形で目標が達成できました」と話すと会場から拍手が湧き起こった。しかし佐藤氏からは「次の目標を持たなきゃダメだ!」と熱いゲキが飛んだ。