東京都が港区の防潮扉にあった覆面芸術家バンクシーのものとみられる作品を25日に公開した。真贋はいまだ不明で「バンクシー作品らしきネズミの絵」という珍妙なタイトルになっている。

 5月8日までという大型連休の人出を当て込んだ公開となった。公開直後こそ見物の列ができたが、その後は散発的に数人がやって来る程度。ちなみに無料である。

 都は今月上旬に公式インスタグラムからバンクシーのインスタグラムへメッセージを送信。防潮扉の写真を添付し、英語で「これはあなたが描いたのか」と確認を求めているが、なしのつぶてだという。

 これまで都には「落書きは犯罪だ」「元の場所にあるからアートとして価値がある」などと批判が集まっている。もっともこの防潮扉はバンクシー騒動がなかったら、いずれ廃止されていたという。

 防潮扉は高潮や津波が発生したときに閉めることで、海水の浸入を防ぐ役割がある。東日本大震災のときに被災地で、閉めに行った人が犠牲になったことがあり、都でもシステムの変更を迫られていた。

 都港湾局の担当者は「こうした防潮扉は可能な限り廃止か、遠隔制御にするかで事業を行っているところです。問題の防潮扉は調整の上、廃止の予定でした」と明かす。展示を管轄する都生活文化局担当者も「たまたま話題になったことでこの扉は延命しました」と言う。

 小池百合子都知事は「チームもったいない」を組織するほど無駄を嫌うだけに「どうせ捨ててしまうなら」と防潮扉の再利用を思いついたのは想像に難くない。

 とはいえ、落書きの真贋が分からないままの公開には賛否あるだろう。もし公開中にバンクシーから否定されたら即撤去なのか。前出の都生活文化局担当者は「バンクシー氏が認めたらとか、否定したらとかというタラレバには答えようがありません」。否定となったら大混乱となりそうだ。