【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】日本や欧米の国際研究者グループが先日、史上初めてブラックホールの撮影に成功。この歴史的な写真を悪用したのが、中国の大手フォトストック企業だ。

 世界同時発表された写真の著作権を勝手に主張し、サイトで有料販売。公式なものと勘違いした購入者が続出し、同社には批判が殺到した。中国共産党や政府のサイバースペース監視委員会も乗り出す事態となり、同社は画像を削除したが、株価は約10%も下落し、今も下がり続けている。

「中国でも取り締まりは厳しくなってるが、それでも著作権に対する意識はまだまだ低い。ブランド品などの精巧な偽物はネット上だけでなく、いまだ市中に出回ってる」とは上海在住記者。“違法コピー天国”として知られているのが、地下鉄2号線の上海科技館駅直結のショッピングモール「亜太盛匯商城(APプラザ)」だ。

 まず目につくのが、仰々しく「知的財産権の侵害は犯罪です」などと書かれた共産党政府の赤い垂れ幕。だが中へ入ると当局の警告などお構いなし。「ニセモノあるヨ」「ナニほしい?」「バッグ? トケイ?」と客引きが次々と声を掛けてきてカタログ片手に付きまとってくる。コワモテで入れ墨をちらつかせたガラの悪そうなおじさんが目立つ。

 客の多くは欧米人やインド系、黒人など外国人。購入品を母国へ持ち帰って売るのだ。日本人客には片言の日本語、フランス語で白人に売り込むおばさんもいた。

 モール内には数百の店舗が密集。服や靴、スマホ関連グッズやオモチャなどが雑多に売られていて、全て偽物といわれている。中でも取り締まりが厳しいニセ高級ブランド品は、表に陳列されていない。

「客引きに付いていくと仰天。正規品のバッグを並べた陳列棚そのものが隠し扉で、ぐるりと反転させると小部屋があった。中にはルイ・ヴィトンなどの偽ブランド品が山積みで、値段は本物の発売時期やサイズにもよるが650~850元(約1万1000~1万4000円)。購入を渋ると、今度はタグ・ホイヤーやロレックスなど、偽ブランド時計の裏倉庫へ連れていかれた」と記者。

 スマホの電卓を叩き「いくらなら買うんだ」と交渉を迫る客引きを振り払うと、背後から「バカヤロウ!」と罵声が飛んできたという。

 こうした品々を転売し儲けるヤカラもたくさんいるようだが、もちろん犯罪。税関などで密輸が発覚したら、商品の没収だけでなく10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、あるいはその両方が科される。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。