史上初となる大型連休を前に国内の観光地は色めき立っているが、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録されている屋久島(鹿児島県熊毛郡屋久島町)に「1000円宿」を発見した。

 基本的に1か月1万5000円~2万円くらいで宿泊できる。1泊単位での宿泊も可能で、その料金が1000円だ。部屋は6つあり、簡易ベッドや二段ベッド、普通のベッドがあり、布団も揃っている。Wi-Fiはないが、テレビや冷蔵庫の置かれている部屋もある。風呂は24時間入ることができ、洗濯機も干す場所もある。ガスコンロもあり、炊事も可能だ。

 70代中盤の男性主人に話を聞くと、その経緯がわかった。

「東日本大震災のときに宿泊施設を造ったのです。家を失った人たちに来てもらおうと思いました。宿泊代から電気代、ガス代など全部無料にしていました。しかし誰も来なかった。結局、ここまで来ても食費は各自持ちですから。聞くところによると、避難所に入れば食事まで出ていたそうですから、来るはずはなかった。それで一般の人に来てもらおうということになりました」

 ある日、記者が遅くに宿に戻ると、鍋物や唐揚げ、鹿刺しなどを出してくれた。主人は毎日3時間以上晩酌をする。そのタイミングで戻るとご相伴にあずかれることも。

「人間、お金なんか持っていたらケンカのもとになるだけ。生まれたときは裸、死ぬときも裸。お金なんか墓場に持って行かれん。わしは近所の人から野菜や魚を毎日のようにもらうけど、全部お返ししてる。島で生まれて小学校は半分も出ていないけどこうやって生きてきた。結婚もしていないけどウチには猫も鶏もいるから寂しくないよ」

 宿名は事情により明かせないが、島内では主人のことを知らない人はいない。役場に行くときは猫と鶏を肩に乗せて歩く。トレードマークは白いツナギだ。ちなみに車のリースもやっており、1か月1万7000円とこれまた爆安だ。