日本人振り込め詐欺グループ タイ・パタヤで一網打尽の怪

2019年04月02日 07時15分

 タイ東部の人気リゾート地パタヤで先ごろ、日本人の振り込め詐欺グループが摘発された事件が波紋を広げている。日本に電話をかける「かけ子」たちとみられ、観光ビザで入国し、不法就労容疑で15人が逮捕された。「パタヤで暗躍するのはロシアマフィアで、マネーロンダリングなどがよく摘発されるが、日本人グループの大規模詐欺事件なんて初耳」と地元民は口を揃える。国際化する振り込め詐欺の舞台というタイの裏側が見えてきた。

 パタヤは「世界で最も下品なビーチ」とも称される海沿いの巨大歓楽街。振り込め詐欺グループのアジトは中心部から5キロほど離れた「サイアム・ロイヤル・ビュー・パタヤ」という集合住宅地にあった。

「付近では風俗施設が深夜まで営業し、地元の酔客や風俗嬢をよく見る。住宅地の入り口には警備員が常駐し、内部は広大かつ閑静で戸建ての外観も立派。中流階級のタイ人家族向けの物件」(現地在住日本人)

 一味は約2か月前から、この高級邸宅を日本人男性名義で月額6万5000バーツ(約23万円)で借りていた。多数の通信機器が持ち込まれているのを家主が不審に思い通報し、摘発につながった。「パタヤは在住外国人が多いが、現場は外国人がほとんどいない住宅地で、15人もの正体不明の日本人が出入りしていれば、かなり目立ったはず」という。

 地元メディア「パタヤ・オンラインニュース」によると、先月30日に逮捕されたのは、カワグチ・ジン容疑者(22)、トヤマ・ヤスタカ容疑者(55)ら22~55歳の日本人の男15人。

 携帯電話52台、ノートブックPC19台、周辺機器、詐欺電話の日本語マニュアルなどが押収された。日本に振り込め詐欺の電話をかけていたほか、日本の有名企業をかたった請求書、裁判所の出頭命令書などを偽造し、日本へメール送信、コンビニでプリペイドカードを買わせるなどしていたとみられる。警察は「被害者は500人以上、被害総額は2500万バーツ(約8700万円)に上る」と発表した。

 首都バンコク在住記者によると「今はネットを介したIP電話の発達で、世界中どこからでも日本に安く電話がかけられる。タイは通信機器なども豊富に手に入るうえ、回線も安定。生活コストも安く、日系のコールセンターは多い」。日本でお客様窓口に電話し、実際につながるのはタイのコールセンター勤めの日本人というケースも珍しくないという。

 いまや振り込め詐欺は国際化。昨年8月にはバンコクでマレーシア人10人が、同7月にはプーケットで中国人22人が、一昨年10月にはバンコクで台湾人6人と中国人2人がそれぞれ逮捕された。昨年4月には、振り込め詐欺の中国人グループに口座や通帳、ATMカードなどを密売したタイ人銀行員が捕まっている。

 タイはかねて日本人によるネット犯罪の温床といわれ、精力剤のネット販売、漫画やアニメ、ポルノの違法配信に関わる日本人がいるとの噂は根強い。同記者は「日本の反社団体のフロント企業がタイで風俗店などを経営しているケースもあり、今回は大規模な組織的犯罪という見方が出ている」と語る。

 気になるのは摘発された15人の年齢層や容姿などに統一感がなく、うち12人の本籍が福岡6人など九州・沖縄地方だったこと(残り3人は大阪と東京)だ。「『プチ海外生活をしませんか』『リゾートバイトしながら海外暮らし』などの文句で釣る怪しい求人がある。その拠点が九州方面にあるのかも」と同記者。

 調べに「パタヤを散歩してたら連れてこられた」などと供述している15人は強制送還される見込みだ。

 バンコクでは今回の摘発前日、6年前に奈良県で起きた振り込め詐欺事件で国際手配されていた橋本和也容疑者(38)が逮捕。このグループのメンバー6人は日本で逮捕されており、被害額は3000万円に上るとみられている。(ルポライター・室橋裕和)

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