「創業の地に恩返ししたい」と10億円 私財で再建・尼崎城に地元も期待

2019年03月29日 17時00分

市のシンボルになる尼崎城

 兵庫県尼崎市の公園に146年ぶりに再建された尼崎城(29日から一般公開)で28日、記念式典が開かれた。多くの地元住民や関係者を前に稲村和美市長(46)は「尼崎の文化を学び、交流を深める拠点として新しい尼崎の魅力を発信したい」とあいさつ。3歳から同市武庫之荘に長らく住んだ落語家・桂米団治(60)が鏡開きを行った。

 尼崎城は1617年、戸田氏鉄(うじかね)が築城。大阪城の西の守りを担った。「5万石の城にしては立派過ぎるものだった。当時は今よりも海岸線が近く、海に浮かぶような城だった」(同市関係者)。だが、1873年の廃城令で、そのほとんどが取り壊され面影は消えた。

 再建を申し出たのが、家電量販店の旧ミドリ電化(現エディオン)創業者の安保詮(あぼ・あきら)氏。「創業の地に恩返ししたい」と私財10億円以上を投じ再建。市に寄贈した。

 もともと城があった場所には市の文化財収蔵庫が建てられていたため、西に約300メートル離れた場所に再建された天守は鉄筋コンクリート造りで5階建て、高さ約24メートル。

 内部では仮想現実(VR)で再現された城下町の映像が見られるほか、甲冑や着物を貸し出しており、武士やお姫様気分になれる。

 城巡りブームとはいえ、近隣の大阪城や姫路城、「天空の城」竹田城跡に比べると印象は薄い。さらに、高齢化社会の進行で行政の台所事情も厳しいご時世とあって「せっかく寄付を申し出てくれているのなら、他の使い方もあるのでは」という意見があったという。

 同市の関係者は「文化施設単体で採算を取るのが難しいのは事実ですし、安保さんの申し出に議会でも『そんなものにどれだけカネを突っ込むんや』という議論もありました」と当初は批判もあったという。

 しかし「2年近くをかけ、地域の方と一緒に形にしていけるように取り組み、多くの方が好意的になった。1億円を目標にしていた寄付が1・9億円集まったことからも期待がうかがえますね」と話している。