失笑の変装保釈ゴーン被告 前代未聞の行動はいったい何のため?

2019年03月07日 19時00分

“完全武装”で外見を変えて拘置所から出てきたゴーン被告(中)だったが…

 会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が6日、保釈された。保釈保証金10億円を東京地裁に振り込みで納付。午後4時半ごろ、勾留先の東京拘置所から出る際には、帽子を目深にかぶり、作業員に変装して報道陣の前に登場。使い込まれた軽ワゴン車に乗って拘置所を後にした。この変装のせいでゴーン被告の姿を撮り損ねた取材者もいたが、多くの報道陣には変装はバレバレ。結局、追いかけられるハメに…。いったい何のために変装したのか? 周囲から失笑が漏れる“ゴーン劇場”を徹底追跡した――。

 ゴーン被告が拘置所から出てくるのは、昨年11月19日の逮捕から107日ぶりのこと。

 この日は午前9時ごろから、外国メディアを含め約200人以上の報道陣が待機し、被告が保釈後に出てくる拘置所の玄関を注視。上空にはヘリコプター約10機が旋回していた。

 午前10時40分にフランス大使館の車で、ゴーン被告の妻で金髪のキャロルさんが背広のような衣類を持ち、娘のキャロラインさんと一緒に拘置所へ。被告と接見すると、約1時間半後に出た。

 しばらくすると、入り口付近にはルーフの上に脚立を積んだスズキのシルバーの軽ワゴン車エブリイが駐車していた。日産車ではない。午後4時すぎ、黒塗りのトヨタ・ハイエースが駐車。報道陣はもちろん、このハイエースに被告が乗車するものと踏んでカメラを構えていた。

 そんな中、軽ワゴン車が駐車位置を微調整し始める。4時半には、青い帽子に白マスク、反射材がついた色違いの作業服を着た工事現場の労働者風の人物と、背格好が似た色違いの作業服を着た人間、さらに白マスクの拘置所職員ら計8人ほどがぞろぞろと拘置所から出てきた。

 この中に、変装した被告がいた。帽子のすき間からは白髪がのぞき、その姿はかつて経営のカリスマと呼ばれた日産のトップの雰囲気はなく、作業員さながら。しかし、変装姿でも鋭い眼光は変わらなかったため、バレてしまった。

 被告は不自然に拘置所職員にガッチリ囲まれ、軽ワゴン車の後部座席に乗り込むと、車は報道陣から逃れるように走り去った。後部座席には段ボールが積まれ、後ろから被告の様子はうかがえない。

 変装を見破ったほとんどの報道陣が被告の姿を撮りまくったが、軽自動車が去ってしばらくたっても「信じられない、本当にあの軽自動車にゴーン被告が乗って行ってしまったのか?」と一同、驚きを隠せなかった。

 司法関係者は「保釈後に向かった弁護士事務所の住所やこれからの住居をマスコミに知られたくないから、弁護団が変装させたよう。拘置所前にがっちり張り込んでいる報道陣は変装を見破って撮影できても、少なくとも路上で待機しバイクで尾行するフリーのパパラッチをまくことはできますから」と話す。

 しかし、あっさりと見破られた。被告の変装について、元警視庁刑事の北芝健氏は「ひそかに変装をすればバレにくいのに、わざわざ拘置所職員が取り囲んでいた。車に乗り込む時には、被告の前後左右を職員がしっかりガードしていた。その真ん中にゴーンがいるのは、ゴーンを襲いに来る連中に備えて、こういう警備態勢をとっているのです」と指摘する。

 リストラされた人、口封じしたい人…ゴーン被告を恨んでいる人は数多いかもしれない。

「警備態勢には2つあって、ハイプロファイルとロープロファイルがある。今回のはハイプロファイルと言い、警備していることをわざと目立たせている。この警備態勢から2つの懸念が分かる。襲われるのではないか、メディアにさらされるのではということです」(北芝氏)

 被告が顔をメガネとマスク、頭を帽子で隠していたのはなぜか。「被告だけではなく、周りにいる拘置所職員までもが顔をマスクで覆っているのは、弁護士側から被告が目立たないようにしてくれという申し入れがあったからではないでしょうか」(同)

 つまり、ゴーン被告自体を目立たせないと同時に、白いマスク集団として目立たせることによって、襲撃者を遠ざける意図があったということだろう。襲撃防止と、ついでに報道陣もごまかせたらという狙いが変装に込められていたのかもしれない。