インドネシアは「世界最悪の渋滞」解消できるか 32年五輪、34年W杯に名乗り

2019年03月07日 17時00分

世界最悪とも言われるジャカルタの渋滞

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は先月19日、国際オリンピック委員会に書簡を送り、2032年の夏季オリンピック・パラリンピック招致を正式表明した。

「インドネシアは昨夏、『アジア版オリンピック』ともいわれるアジア競技大会のホスト国を担った。45の国と地域から選手1万人以上が参加し、さらに大勢の関係者やメディアも押し寄せたが、目立ったトラブルもなく無事に主催できた。それが自信につながっている」とは首都ジャカルタ在住記者。

 地元では「2025~30年の間にインドネシアは労働人口が最も多くなる。五輪招致が重なれば、一気に経済発展できる」と歓迎する声が高い。一方で、「前回のリオ五輪は、当初の計画をはるかに上回る1兆2000億円以上もの費用がかかり、その後、ブラジル経済を圧迫し、治安も悪化している。来年の東京五輪も予算7000億円のはずが、3兆円にまで膨れ上がっている。インドネシアにそんな金はない」と断じる意見も。

「経済成長してはいるが、一方で都市部にはスラムも多く、離島や農村では貧しい暮らしを送る人々がまだたくさんいる。30年に人口が3億人を超えるというのに、どうやって食わせていくのか。先進国のようにスポーツに多額の国家予算を割く前に、もっとやるべきことがあるはず」など、怒りの声もSNSにはあふれる。

 また「インドネシアは陸上や水泳など五輪人気競技が弱い。メダルが期待されるのは、リオ五輪で金メダルのバドミントンと、銀メダル2つのウエイトリフティングくらい。これで開催国になっていいのか」と不安がる人も。

 日系メーカーの駐在員によれば「アジア大会でも地元民の関心は薄く、客席はガラガラだった。オリンピックになっても盛り上がるか疑問。それより渋滞をどうにかしないとオリンピックどころじゃない」と語る。

 インドネシアでは、豊かになった中間層がどんどん自家用車を持つようになっていて、道路はすでにパンク状態。ジャカルタは今や世界有数の渋滞都市だ。

「日本の支援で今月末、ジャカルタには国内初の地下鉄が開通するが、焼け石に水だろう。ほんの50キロ郊外の日系工場団地まで、車で5時間かかることも。アジア大会のときは、選手の移動に合わせて高速道路が封鎖された影響で、ジャカルタの渋滞は『普段の3倍』と言われるくらい悪化。オリンピックとなれば確実に操業に影響が出る」と駐在員。

 五輪招致も地下鉄開通も、来月17日の大統領選挙に合わせたもので、ジョコ大統領の人気取りにすぎないという話もある。さらにインドネシアは、34年のサッカーW杯開催国にも名乗りを上げている。東南アジアの大国は存在感を見せられるか。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。