北朝鮮の朝鮮中央通信は5日朝、金正恩朝鮮労働党委員長の特別列車が平壌に到着し、帰国したと報じた。金氏は米朝首脳再会談が行われたベトナムを2日に離れた。後ろ盾である中国の習近平国家主席と会談するかどうかが注目されたが、北京には寄らず帰国したもようだ。

 正恩氏はベトナム・ハノイで2月27~28日、トランプ米大統領と非核化や制裁解除を巡り再会談、物別れに終わった。予想された経済関連の視察も行わなかったが、北朝鮮の国営メディアは合意見送りに触れずに再会談を「歴史的」と宣伝。華々しい成果が出るはずだった会談が物別れに終わったのは、北朝鮮がトランプ大統領を甘く見ていたからかもしれない。

 国際政治に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「トランプはポーカーゲームが大好きなことで有名です。外交も相手と面と向かって勝負するポーカー形式です。結局、金正恩はそのポーカーで負けたのです」と語る。

 正恩氏にしてみれば、ほとんどダミーに等しい寧辺の核施設の廃棄というカードで経済制裁の大幅解除を引き出そうとしたのだろう。

「ところが、トランプは、北がひそかに建設中の新しい核施設の証拠をポンとテーブルの上に広げてみせた。これで勝負は終わったのです。トランプにしてみれば、せいぜいが、スリーカード程度の手だったでしょう。ロイヤルストレートフラッシュはあえて切らなかった。『キムとは本当にいい友達になった』。これも実にトランプらしい人を食ったセリフです」と但馬氏。

 トランプ大統領の“ポーカー”は2017年4月の米中首脳会談でも行われた。「トランプは習近平との会談後、チョコレートケーキを食べている最中に『たった今、シリアに59発程度ミサイル撃ったところだよ』と言って習を固まらせました。まるで、野球の結果を話すような口調で。まさにポーカーフェースです」(同)

 人民に大見えを切ってのハノイ入りだっただけに“ポーカー”で負けた正恩氏の落胆はいかほどか。