美術モデルが京都造形芸術大学を「セクハラ告発」提訴の行方

2019年02月28日 17時00分

提訴し会見した大原直美さん

 美術モデルの女性が「ヌード」をテーマとした大学の公開講座に参加したところ、講師の芸術家によるセクハラ言動および提示された作品が性的で精神的苦痛を受けたとして、講座を主宰した大学を相手取り、慰謝料などを求めて東京地裁に提訴した。もともと“過激”な作風で知られる芸術家、それを知らなかった受講生、セクハラ対策が不十分とされた大学――複雑な要素が絡み合った問題の答えはどう出るのか。

 東京・霞が関の司法記者クラブで27日、会見したのは原告の美術モデル大原直美さん(39)。

 京都造形芸術大学(学校法人瓜生山学園)外苑キャンパス(東京・港区)でのヌードをテーマとした5回連続の公開講座(昨年4~6月)を受講し、ゲスト講師の作品および言動によるセクハラが原因で精神的苦痛(適応障害と診断)を受けたという。受講生に対して負うべきセクハラ防止・対策の義務に違反したとして、同学園に慰謝料など約333万円の支払いを求めて22日、提訴した。

 大原さんは2014~17年、同大の通信部に編入、卒業したOG。15年から絵画や彫刻作品のヌード・着衣モデルとして活動し、公開講座にも通っていたが「問題となった講義は大変ひどいものだった」(大原さん)という。

 第3回(5月15日)の講師は現代芸術家の会田誠氏。涙を流した少女がレイプされている絵や、ゴキブリと性行為をする女性、四肢切断されて犬の格好をしている女性の絵を巨大スクリーンで映した。大原さんによると、会田氏は遅刻したうえに酔ってロレツも回らず、下ネタを連呼。

 会田氏の作品は児童ポルノや性的虐待と批判され、展示が中止になったことでも知られる。だが、作風やキャラクターを知らなかった大原さんは事前に予測もできず、過激な作品を見せられ、講義で会田氏が語った「自分が学生(東京芸大卒、同大大学院修了)のときに来た美術モデルをズリネタにオナニーした」との発言を冒とくと受け取った。

 すぐに大学のセクハラ対策窓口に苦情のメールを送ったが、その後の第5回(6月12日)のゲスト講師の写真家・鷹野隆大氏は無修整の男性器の写真を何枚も大画面に映した。大原さんは弁護士を交え、大学側に対策の徹底を求めた。

 大学側は「会田講師の言動に性的で配慮に欠けるものがあった」「投影した女性の写真の乳首に描かれた富士山にペンライトを当ててつついたりした」などセクハラの事実は認めたが、交渉は決裂。特に、大学側が和解条項に「学生としても仕事としても今後、大学にかかわらないこと」と大原さんの排除を盛り込もうとしたことが溝を深めた。

 同学園で、わいせつな言動や作品を実際に提示した講師は訴えられていない。大原さん側は被害相談した学生側を排除し、著名人である加害者を守ろうとする対応を問題視。大原さんは「大学の授業に参加したことで大学から排除されるのは本末転倒。大学の同窓会への出席さえ制限しようとした」と明かした。

 大学による講師の聞き取りも依頼したが、受け入れられなかった。会見後に会田氏が「寝耳に水でした」と更新したツイッターでも明らかだ。会田氏は「酒に酔った」との大原さんの受け止めについても「まったく事実と違います」とツイートしている。

 会見が報じられるや、ネット上では大原さんへの批判が上がった。会田氏や鷹野氏のことを事前に調べていれば作風はわかるとして「クレーマー」「当たり屋」などだ。

 ある美術家は「確かに会田氏の下ネタを楽しみにして受講する人もいるだろう」と話す一方、大学側が講座の受講生の対象を「全対象(技術・知識の量を問いません)」としていたことに「誰でも受講させているなら、事前告知など配慮は必要。作品の芸術とわいせつ性は散々議論されてきたが、芸術家の人格と作品は分けて考えるべき。芸術はセクハラにならずとも、芸術家のセクハラはセクハラだ」とも話す。

 瓜生山学園は「まだ訴状が届いていないのでコメントできません」としている。