戦場ジャーナリストが日本から消える? 常岡氏“永久出国禁止”受け怒り「外務省は取材の意義理解してない」

2019年02月07日 17時00分

フリージャーナリストの常岡浩介氏

 世界各地の紛争地や危険地を取材しているフリージャーナリストの常岡浩介氏(49)が、外務省から旅券返納命令を受け、事実上の“永久出国禁止”となったことが判明し、波紋が広がっている。4年前にもシリアへの渡航を計画したフリーカメラマンが同様の措置になっており、またも起きた外務省の異例の対応に、常岡氏は「戦場ジャーナリストが殲滅(せんめつ)される」と危機感を募らせている。

 河野太郎外相は5日の記者会見で「外務省が旅券返納命令を出したのは適切だ」との認識を示した。常岡氏が反発していることに関し「不服があれば、訴訟などの手段が保障されている」と強調。一方で「身の危険を顧みず、危険な場所で取材をされるジャーナリストには敬意を表したい」と述べた。

 常岡氏は今月2日夜、羽田空港から出国する予定だった。カタール、スーダンを経由し、内戦が続いているイエメン入りし、現地で飢餓問題の取材を計画していた。ところが、羽田空港の出国審査場で、入国管理局職員から「旅券返納命令が出ている。旅券が有効になっていない」と通告され、同日付の返納命令書を渡された。そこには「旅券法第13条第1項第1号」に違反したとの理由が書かれていた。

 常岡氏は先月もオマーン経由でイエメン入りしようとしたが、オマーンのマスカットで入国を拒否され、強制送還されていた。外務省はこの入国拒否の事実で、旅券法に抵触するとして返納を命令した形だ。入国拒否自体は珍しいことではないが、返納命令は異例ともいえる措置だ。

 常岡氏と外務省、日本政府のバトルは長い。常岡氏はロシア、グルジア、パキスタンで政府組織に拘束され、アフガニスタンでタリバンを自称した政府軍の武装勢力に157日間にわたって拘束された。14年には北海道大学の学生がイスラム国(IS)に加わるためシリアへの渡航を計画し、常岡氏は同行取材を試みようとしたところ、私戦予備・陰謀の疑いで家宅捜索を受けたこともある。

 以後、常岡氏は日本と友好関係がある国を中心に、理由は定かにされないまま入国拒否される事態が相次いでいた。

「(外務省や警察筋から)ISのメンバーというデマを流されているかもしれない」(常岡氏)と疑っていたなかで、今回の事態となった。

 返納命令は旅券が一時的に取り上げられるだけではない。常岡氏は「今後、旅券の申請はできるが、発給されるかは分からないようです。ニュアンスとしては発給されない。(期間は)基本、永久のようです」と今後、海外への渡航ができなくなるという。

 海外取材できなければジャーナリストとしての職業を奪われる。それだけに「憲法で保障されている職業選択の自由を奪われ、海外渡航の自由もない」と憤る。

 外務省は「個別の事案にはコメントできない」としているが、昨年、フリージャーナリストの安田純平氏がシリアで約3年4か月に及ぶ拘束から解放され、自己責任論が巻き起こったことと無関係ではないようだ。

 常岡氏は「外務省や日本政府は紛争地を取材する意義を理解してなくて、ただ世間からのバッシングが怖いだけ。今回のような恣意的な運用を続ければ、紛争地を取材するジャーナリストを殲滅できる。日本は全くインテリジェンス(情報)を持ち合わせない国になってしまう」と危惧する。

 現在、日本の大手新聞社やテレビ局に“戦場ジャーナリスト”は存在せず、リスクを冒して取材しているフリーランスから映像や素材を購入しているのが実情だ。

「自称や引退した人もいて、本当に現場で取材する“戦場ジャーナリスト”と呼べる日本人は10人もいない」(常岡氏)

 紛争地での取材制限が厳しくなれば、日本から本当に“戦場ジャーナリスト”の職業が消えかねない。