安倍晋三首相が通常国会の施政方針演説で、韓国との2国間関係に言及しなかったことに韓国が揺れている。韓国メディアは「韓国パッシング(外し)」などと大きく報じた。安倍首相は過去の演説では「最も重要な隣国」と韓国に触れてきたが、今回は無視。専門家は韓国の心中を分析した。

 慰安婦問題での日韓合意のちゃぶ台返し、元徴用工の未払い賃金に関する韓国最高裁判決と韓国内の日本企業の資産差し押さえ、レーダー照射問題など、日韓関係は国交樹立後、最悪の冷え込みを見せている。それだけに、韓国は安倍首相の演説内容が気になっていたようだ。

 先月28日の施政方針演説後、主要韓国メディアは一斉に「意図的な無視戦略」(京郷新聞)などと批判を展開。聯合ニュースは「中東やアフリカに言及しながら、最も近い韓国には触れなかった。中国や北朝鮮との距離を縮めようとの意思も鮮明にした“中朝へのラブコール”だ」と皮肉った。

 韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「過去、韓国は事あるごとに反日的な政策を取ってきましたが、日本は彼らを見限ることはなかった。むしろ、日本が大人の態度を示すことで、どうにか事なきを得てきた。今回も同様の配慮があるはずとタカをくくっていた部分もあったでしょう。聯合ニュースの『中東やアフリカにも言及したのに最も近い韓国には触れなかった』という部分は、序列にこだわる彼らの無念さと屈辱がにじみ出ています」と語る。

 近隣にありながら仲の悪い国同士や地域同士というものは無数にある。だが、韓国の反日は、パキスタンに対するインドの感情や、イスラエルに対するパレスチナの感情とも異質のようだ。

「甘えといっていい。彼らは日本に無視されることを恐れます。反日ともいえない、低レベルの嫌がらせ、旭日旗に文句を言ったり、修学旅行生が日本の名所で『独島はわが領土』の横断幕を掲げたりする行為は、屈折した愛情表現のアピールでもある」(同)

 理解しがたい“愛情”だが、但馬氏はこうも説明する。

「小学生が好きな女の子にわざと意地悪する心理と似ています。嫌われてしまうが、無視されるよりはいい。嫌いという感情で相手に意識してもらえる。嫌いという関係性でつながっている安心感があるわけです」

 日韓関係が悪化する一方で、日本では第3次韓流ブームも起きている。

 2004年ごろからドラマ「冬のソナタ」を中心としたペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、ウォンビンの「韓流四天王」俳優による第1次韓流ブーム。10年ごろからは東方神起、少女時代、KARAなどのK―POPによる第2次韓流ブーム。そして今は第3次ブームだ。

 日本最大のコリアンタウン、東京・新大久保の住民は「17年ごろからTWICE、防弾少年団(BTS)などのK―POPに加え、インスタ映えするチーズタッカルビやチーズホットドッグなどの食べ物、オルチャン(美少女)メークなど、多岐にわたる文化で今は過去最大の韓流ブーム。休日には若い女性が通りにあふれ、原宿の竹下通り並みに混雑しています」と話す。

 日本は、韓国の屈折・倒錯した感情を疎ましく思いながらも、民間の文化交流では親韓でもある。但馬氏は「いわゆる嫌韓ブームと韓流ブームがパラレルで続いてきた、不思議な構造も読み取ることができます。もはや日本と韓国の関係は『好き・嫌い』の感情を通り越した次のステップに入った」と分析している。