仰天!タイの大麻事情 大捕物の一方で「医療用」が解禁

2019年02月02日 17時00分

チェンマイ郊外の山里に自生する大麻。誰もとがめない

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】タイ東北部の田舎町ナコンパノムで28日、大捕物があった。

 現地紙ウェブニュースサイト「パタヤ・ワン」によると、警察の検問に引っ掛かったピックアップトラックが、停止命令を無視して急発進し、猛スピードで逃走。警察車両と激しいカーチェイスの末、運転手は車を捨て田んぼに逃げ込んだが、警察に追いつかれ御用となった。後部座席には、重さ1キロのレンガ状の塊が400個。圧縮した大麻だった。

 ナコンパノムのメコン川を接した対岸はラオス。大麻の一大名産地といわれ、高品質なものが出回っている。ラオスは山岳国で大麻栽培に適した冷涼な土地があり、国境を越え、密輸が行われているのだ。

 タイ南部のリゾートアイランドや北部の避暑地では、欧米人のバックパッカーたちがひそかに大麻を楽しんでいる。その気になれば、バイクタクシーやトゥクトゥク(三輪タクシー)の運転手、またゲストハウスのスタッフなどから入手可能。軍事政権になってから取り締まりはかなり厳しくなったが、それでも広く蔓延している。

 大麻のみならず、29日にはタイ北部チェンマイで17万錠ものアンフェタミン(覚醒剤)が押収された。摘発されたのは少数民族ラフ族の家族。一家で密売を生業にしていたという。首都バンコク在住記者の解説。

「この地域はタイとラオス、ミャンマーの国境地帯で麻薬の密輸が盛ん。産業に乏しく、従事するのは伝統的に貧しい山岳少数民族が多い。2003年、当時のタクシン首相が大々的に警察や軍を投入し、麻薬撲滅作戦を展開。2500人以上が死亡し、逮捕者は9万人に上ったといわれ、人権問題だと国際的な批判を浴びた。その後、タクシン氏が失脚すると、取り締まりの手は緩んだ。タイは今、麻薬汚染がすごい」

 それなら…ということなのか、タイ政府議会は昨年のクリスマス、医療用途および研究用での大麻所持を認める決定をした。小児てんかんや末期がんの苦しみの緩和、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの病気に効果があるとされる。ちなみに麻薬法改正の起草委員長であるソムチャイ・サワンカーン氏は「これはタイ国会からの新年の贈り物だ」と発言し、物議を醸した。

 医療大麻が必要と判断された外国人も所持できるという。タイはすでに「メディカルツーリズム(医療サービス目的の海外渡航)大国」として知られ、将来的には大麻を使った治療が受けられるようになるかもしれない。まず医療大麻を容認してから嗜好用大麻を合法化…というのが世界の潮流。海外旅行好きからは「そんな日が来たら絶対、頻繁にタイへ行く!」なんて声もあるが、果たして…。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。