強姦罪などで服役中に被害証言がウソだと分かり、再審で無罪が確定した大阪市内在住の男性(75)と妻が、国と大阪府に対し計約1億4000万円の国家賠償を求めた訴訟の判決が8日、大阪地裁(大島雅弘裁判長)で行われた。

 男性らは捜査の違法性や裁判所の過失を指摘したが、地裁は判決理由で「職務上尽くすべき注意義務を怠ったとは認められず、女性らの供述に基づき、男性に有罪と認められる嫌疑があると判断したことは不合理ではない。裁判官が、違法または不当な目的をもって裁判をしたなどの特別の事情も存在しない」として訴えを棄却した。

 男性は判決について「許せない。本当にガッカリした。何も冤罪について反省していない。自分たちの間違いを認めようとしないのは、私のような冤罪の犠牲者がまた出るということ。今の司法は納得できない」と怒りをにじませた。

 起訴状などによると、男性は2008年、10代の親族女性に性的暴行を加えたとして逮捕、起訴された。男性は無罪を主張し続けたが、地裁は女性や目撃者の証言が信用できると判断。09年、男性に懲役12年の実刑判決を言い渡し、11年に最高裁で刑が確定した。

 ところが、女性や目撃者が「証言がウソだった」と話していたことが判明。女性の「処女膜は破れていない」とする診療カルテの存在も明らかになり、男性は14年、再審を請求。翌年、無罪が確定した。

 男性は約6年に及ぶ拘束期間で「全てを奪われた。私が汚名を着せられて、女房は精神的ストレスで入院し、介護も必要になった。多くの友人を失い、金銭的な損害も被った」と言い「賠償に当たらないとは、一体どうなれば賠償するのか」とあきれ果てた。

 代理人弁護士は「当然、控訴の方向で考えている。これほどひどい判決をそのままにできない」と語った。