和歌山県警橋本署は25日、高野山金剛峯寺奥之院(同県高野町)の弘法大師御廟のさい銭箱から現金を盗もうとした窃盗未遂容疑で、自称大阪府松原市に住む、無職・森哲弥容疑者(50)を現行犯逮捕した。

 森容疑者は25日午前0時20分ごろ、さい銭箱の中に釣りざおを入れ、さい銭を盗もうとした疑い。ズボンのポケットには小銭が100枚以上入っており、関連を調べる。

 24日にさい銭箱付近で不審な動きをしている男が防犯カメラに写っており、僧侶2人が翌日、見張りをしていたところ、釣りざおと粘着テープを持った森容疑者を発見。取り押さえて署に引き渡した。森容疑者は「記憶が抜けており分からない」と否認している。

 奥之院は、一帯が撮影禁止になっているほど、厳かな場所。しかもさい銭箱は、奥之院の最奥、弘法大師空海が今なお瞑想を続けているとされる神聖な場所にある。

 捜査関係者は「24時間出入りは可能だが、夜は人けがなく、周囲に住居もないことから盗みやすいといえば盗みやすい。昼間は観光客や参拝者も多く、お金が入ってる可能性が高いと見込んで狙ったのかも」と言う。

 森容疑者は逮捕時、千円札数枚と小銭、合わせて1万3000円ほどを所持。「特段変わった身なりでもなく、金に困っていたかは分からない」(同)

 地元住民は「さい銭泥棒はよくある話。ご本尊を盗むなんて話もあるくらいだから」と言う。和歌山県では近年、仏像などが盗まれる被害が相次いでいる。

 古美術品に詳しい関係者は「日本の仏像は世界的に人気があり、特に鎌倉期以前に作られたものは価値が高い。盗品と分かっていても『黙ってたら分からん』と買い取る業者もいるし、ネットの普及で増えたにわか古美術商だと、有名な仏像ならともかく、田舎の小さな寺のものだと目利きもできない」と指摘する。今回のさい銭ドロは仏像泥棒ではないが、バチ当たりなことに変わりはない。