金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、日産自動車の会長を解任されたカルロス・ゴーン容疑者(64)に対し、三菱自動車は26日、会長職と代表取締役の解任を決めた。進退窮まったかに見えるゴーン容疑者だが“検察の拙速”を指摘する声が出ている。

 逮捕容疑になったのは2015年までの5年間で、有価証券報告書への約50億円の過少記載。当初は毎年約20億円の報酬を得ながら、約10億円しか記載していなかったとみられたが、この1週間で中身が大きく変わっている。

 ゴーン容疑者は自身の退任後に受け取る報酬として、毎年10億円をいわば積み立てており、これが記載されていなかったという。

「検察は(逮捕事案の中身を)十分に検討しないまま、ゴーン氏とケリー氏(代表取締役を解任)の身柄を確保できるチャンスで、拙速に行ったのでは」と26日、日本外国特派員協会で会見したのは、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏(63)だ。郷原氏は特捜部が問題視する約50億円の不記載について「支払いを受ける確実性」に争いの余地があるという。

「退任後に受け取る予定でも状況が変わって、赤字で引責辞任となった時にもらえないとなるかもしれない。実際にそういうものを有価証券報告書に記載されている実情もない。(類似で)日本には役員退職慰労金という制度があり、その場合でも報告書に記載された例は聞いたことはない」
 虚偽記載は「重要な事項」に虚偽があったとした場合に認められるが「退任後の支払いについて記載しなかったことが投資家の判断にどれだけ影響したのか。ほとんど問題にならない」とした。

 特捜部は別件での逮捕に奔走しているとみるが、会社資金による海外の不動産購入等を特別背任罪で立件するのはハードルが高いという。それでも特捜部が一度逮捕した以上、グレーな法解釈であれば、有罪に持っていくのは間違いない。郷原氏は「不当性を訴え、社会的に対抗策を講じていかないと裁判の段階で勝負が終わってしまう」とゴーン容疑者側にアドバイスしたが…。