改正された公証人法施行規則が今月30日に施行される。株式会社、一般社団法人および一般財団法人設立における定款認証の際に、実質的支配者が暴力団員や国際テロリストでないかを申告することになった。

 段階を追って、昨春から、株式会社や一般社団法人の変更登記の際に、株主リストの提出を義務付けるように法改正が施行されていた。株主、出資者に関しては、設立の時しか法務局がチェックしない仕組みだった。

 だが、法人のオーナーが不透明だと法人が詐欺に使われたり、虚偽の株主総会議事録で会社が乗っ取られる事案が多発していたため、改正されてきたわけだ。

 今回の改正について詐欺研究家の野島茂朗氏はこう語る。

「これで反社会勢力が直接、法人を設立できなくなります。そのため、企業舎弟は表向きでは規制されますが、多重債務者が詐欺グループに銀行口座を貸すように、会社の設立の発起人などの名義を貸す事案が増えるでしょう。また、設立時に公証人役場で定款認証を必要としない、合同会社等を設立する反社会勢力が増える可能性もあります」

 公証人役場は裁判官OBなどが公証人として、定款を認証する機関。株式会社、一般社団法人は、公証人役場で定款を認証してから法務局に登記申請する仕組みになっている。一方、合同会社の場合は、法務局に登記申請書類を出すことで設立可能で、定款を公証人が認証する必要はない。野島氏は「暴力団等、反社会組織が会社を使って詐欺等の犯罪をして、収益を得ていたのを止めるために、政府は重い腰を上げたのでしょう。しかし、手続きに携わる者の業務が増えるだけで、犯罪予防には微妙なようです」と指摘している。