「ミス・アジア」優勝イスラム美女SNS炎上の政治的背景

2018年10月11日 17時00分

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】フィリピンでさる4日に開催された「ミス・アジア・パシフィック・インターナショナル」は、1968年に始まったアジア初のミスコン。今年は50回の節目で、日本からは2016年ミス・ユニバース・ジャパンの三重県代表が出場するなど、50か国から50人がエントリーした。栄えあるナンバーワン美女の座を射止めたのは、フィリピン代表シャリファ・アキールさん(21)。

 身長172センチのスレンダーボディーに、豊満なバストとヒップが魅力的。セクシーな唇とエキゾチックな目元も男心をそそる。9月には国内のミスコンでも優勝。2冠達成で一気にスターダムに上がりそうな勢いだが、国内ではシャリファさんの出自をめぐり論争が起きている。

「彼女の本名はシャリファ・アレフ・モハマド・オマル・アキールで、ミンダナオ島出身のイスラム教徒です」とは首都マニラ在住記者。フィリピンは人口約1億人のうち90%以上がキリスト教徒だが、5%ほどのイスラム教徒も南部のミンダナオ島を中心に住んでいる。シャリファさんは今、そんな同胞たちから猛バッシングを受けている。

「イスラム教徒の中でも保守的な人々にとっては、女性が美しさを競うため世間に出るだけでも“恥知らず”とされる。『イスラムから逸脱した行為だ』と叩かれたんです」(同)

 先月の国内コンテストで優勝したあたりから風当たりが強くなり、今回のミスコンではセクシーな衣装もやり玉に挙がった。「イスラム女性にはふさわしいドレスコードがある」と保守層は激怒したのだ。

 イスラム女性は常にヒジャブという布で髪の毛を覆うなど、肌を極力隠さなければいけない。水泳競技でも、肌と頭部を露出しない特殊なウエアを着るほどだ。「なのにあろうことか、大胆な水着姿をさらしてなまめかしい胸元や太ももを露出するなど考えられない」などといった批判がシャリファさんのSNSに殺到した。

「お前はイスラム教徒ではない」「イスラムの教えを冒とくする無知な女」「イスラムの名前を捨てろ」といった書き込みで炎上。ただ一方では「イスラム女性にも表現や服装の自由は認められるべき」「彼女を優勝させたのは神のおぼしめし」といった擁護の声もあった。

「ミンダナオ島では長年、独立を求めるイスラム系勢力と政府の対立が続いてきた。近年ではイスラム国(IS)の分派が流れ込み、北部マラウィ市が壊滅するほど激しい戦闘が起きている。フィリピン国内のイスラム教徒に向けられる視線は厳しい。その反発として、一部イスラム教徒が過剰に保守化、先鋭化している」と、前出記者は炎上の背景を解説する。

 自身への批判についてコメントはしていないシャリファさんだが、イスラム教については「平和の象徴。それにキリスト教徒とも団結できることを示したい」と語っている。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。