【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】マレーシアはさる8月31日、61回目の独立記念日を迎えた。この日はなるべく国の伝統的な料理を食べ、独立を祝おうという気風がある。そんな日を狙い、マレーシアの国民的ドリンク「テ・タリク」風味のコンドームが新発売。「香り高く、美味で、魅惑的」というキャッチフレーズ付きだ。

 テ・タリクはダストという安い紅茶をふんだんに使い、たっぷりの砂糖とコンデンスミルクを混ぜて飲む。朝食はこのミルクティーと、ココナツと卵から作ったジャムを塗ったカヤトーストが定番という地元民も多い。

「マレーシアは英国の植民地だった影響で、紅茶文化が浸透している。それも熱帯の気候だからか、甘いミルクティーが好まれている」とは首都クアラルンプール在住の駐在員。

 だが最近は健康志向が広まり、砂糖を減らしたテ・タリクを飲む人が多いんだとか。そんな風潮を反映してか、問題のコンドームには「Kurang Manis(甘さ控えめ)」と書かれている。SNSには「程よい甘さでつい夢中になってしまった」といったユーザーレビューも。

 発売元「ワン・コンドームズ」社の広報担当者は「テ・タリクはマレーシアを代表する味。このコンドームによってパートナー同士の愛情はより深まり、多くのマレーシア人を寝室に誘うでしょう」と宣伝している。値段は3つ入りで8・4リンギット(約226円)。コンビニやウェブサイトで手軽に買える。

 マレーシア名物には、他にも“激臭フルーツ”ドリアンと、ココナツミルクで炊いたご飯に小魚やピーナツ、サンバルソースなどをトッピングした「ナシレマッ」がある。同社は2年前にも、この2大名物風味のコンドームを発売し、話題になっている。

 こうした“面白コンドーム”の製造元「カレックス・インダストリー」社のCEOは、「コンドームをより魅力的にすることが我が社の使命。ナマでハメるよりも、コンドームを着けてセックスするほうが気持ちいいと思ってもらうことが目標だ」と胸を張る。

 実はマレーシアは世界最大のコンドーム生産国。カレックス社は世界最大級のコンドームメーカーとして知られている。「英国統治時代から開発が進んだ天然ゴムのプランテーションは、一大産業として成長。世界的に需要が高まっているタイヤだけでなく、コンドームなどの生産量も急増している」と前出駐在員。

 同社は年間30億個超のコンドームを製造し、売り上げはさらに伸びると予想されている。日本は少子化だが、世界人口は急激に増えていて、コンドームの供給が追い付かないほど。今年5月には、日本の大手コンドームメーカー「相模ゴム」がマレーシア工場を増設し、生産量を大幅アップさせた。マレーシアは知られざる“コンドーム景気”に沸いている。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「おとなの青春旅行」(講談社現代新書)。