北海道中央南部の胆振(いぶり)地方を震源とする最大震度7の揺れを観測した6日未明の「北海道胆振東部地震」で警察庁は7日、死者は計9人と発表した。ほかに少なくとも26人の安否不明者がおり、被害が拡大している。一時は道内全域295万戸に及んだ停電は「ブラックアウト」現象を引き起こし、インフラが機能マヒに。スマートフォンが充電できない“バッテリー難民”が続出した。専門家は大災害に備え“脱スマホ”のススメを提言する。

 6日午前3時8分に襲った地震は、厚真町で震度7を記録し、北海道では観測史上最大の揺れとなった。大規模な土砂崩れが発生し、多くの民家が押し潰された。

 また、同町にある北海道電力の苫東厚真火力発電所が地震直後に停止。同発電所は道内の使用電力の約半分を供給しており、停止により電力の需給バランスが崩れ、連鎖的に道内の火力発電所すべてが停止した。

 経済産業省は6日、地震による北海道全域の停電について、北海道電力が、苫東厚真発電所の停止によって他の発電所が一斉に停止し、管内全域が停電に陥る事態(ブラックアウト)を想定していなかったことが一因だとの見方を示した。

 本州からの電力融通も不備が露呈した。青森県と北海道をつなぐ海底ケーブルで最大60万キロワットを送電できるが、今回は函館市内にある関連設備が停電で動かず、大事な場面で役に立たなかった。経産省は広範囲にわたり停電が長引くとし、病院などの自家発電機への燃料供給を急ぐが、北海道全域の全面復旧には、少なくとも1週間かかる見通しだ。

 北海道中央南部・胆振地方とされる震源地付近は住宅密集地でなかったが、停電は札幌、旭川、函館、釧路など人口が密集する都市圏を含む全道に及び、どこもかしこも暗闇に包まれ、道路の信号は消えた。さらに夜明けとともにコンビニやホームセンターには長蛇の列ができ、多くの人が買い求めたのは、スマホの充電器だった。

 スマホは通話だけでなく、ネット、ラジオ、ワンセグ(iPhoneは除く)、ライト、地図など多くの機能を持ち合わせ、災害時でも役立つ“必需品”とされている。だが、充電できずにバッテリーを失えば、無用の長物と化す。

 ネット上では「スマホが使えなくて死にそう」「充電器がどこにも売っていない」と悲鳴が上がった。「スマホ節電」など関連検索ワードも急上昇。

 元東京消防庁消防官で防災アナリストの金子富夫氏は「常日頃から最低限でいいので、防災グッズを用意しておかないといけない。ラジオや手動充電式の懐中電灯、ホイッスル、ロウソクなどは買い揃えておける。スマホが使えなくなって右往左往している状況を見ると、いかにスマホに依存している社会なのかが分かるが、助かることを考えれば、いざとなって役に立つアナログの物も取り揃えておかないといけない」と力説する。

 政府の地震調査委員会は昨年末、千島海溝沿いで東日本大震災級の地震が今後30年間に発生する確率が最大40%と公表していた。今回の地震と震源地はずれるものの、地震が及ぶ範囲として警戒されていた地域でもあった。

「北海道は沿岸部はともかく、内陸を震源とする大きな地震が少ない地域だけに、慣れもなければ、油断もあったかもしれない。ただ、今の日本の災害状況を見れば、地震予測の地域に入っていなくてもどこで大地震が起きてもおかしくない。いつどこで災害に見舞われても対応できる意識と準備が必要な時代です」(金子氏)

 今回の地震規模が、もし3500万人を有する東京圏の首都直下で起きた場合を想定し、シミュレーションしておくのも災害対策につながる。

「先日、東京東部で水害が起きた際、浸水想定区域に住む250万人が隣県などに避難を強いられるとの発表があったが、関西国際空港で孤立した8000人を輸送するのに何十時間とかかっている。250万人なんてとても避難できない。今回の台風と地震の被害を肝に銘じ、防災計画を見直さないといけない」(金子氏)

 政府は首都直下地震、南海トラフ地震が30年以内に起きる確率を70%と公表している。全国で大地震への備えが必要だ。